中国の個人宛てに日本から品物を送るときには価格や数量に制限があります。

知らずに送ってしまうと中国税関で品物が止まってしまい。日本へ送り戻されたり廃棄処分になったりします。

今回は、中国向け発送で知っておくべき知識をまとめました。

中国税関の法律は、突然変わる場合があります。実際に貨物を発送する場合は、最新の情報を運送会社に確認することをおすすめします。
 
 

1.個人貨物と商業貨物の違いとは?

中国向けは個人貨物と商業貨物で税関手続きが異なります。

個人貨物の手続きについて

個人貨物とは、荷受人の住所が個人名の品物のことで税関手続きは簡易通関扱いとなります。

貨物の受取にあたっては、【行邮税】と呼ばれる郵便税が徴収されます。

しかし、たとえ個人宛ての品物であっても、中国税関で価格や数量が個人用途の範囲を超えていると判断されると商業貨物と同じく一般通関扱いとなる場合があります。

この場合は、 輸入関税・消費税・輸入増値税などが徴収されます。

商業貨物の手続きについて

商業貨物とは、荷受人の住所が企業名の貨物のことで税関手続きは一般通関(通常通関扱いです。

一般通関(通常通関)の貨物は、輸入申告ライセンスを持っている国際貨物運輸代理会社または貿易会社が中国税関に輸入申告を行なう必要があります。

また貨物の受取にあたっては、輸入関税以外に輸入増値税・消費税(贅沢税ともいいます。)等の各種税金を納める必要があります。

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2.中国に送れない品物とは?

 

EMS(国際スピード郵便)や民間クーリエサービス(国際宅配便)を利用する場合は、航空法関連法規で禁止されている品物は送ることができません。

具体的な禁止品目としては、スプレー缶・カセットコンロ用ガス・炭・日焼け止め、ヘアトニック・電子タバコ・マニュキュア・香水・マニュキュア・花火やクラッカー・アルコール度24度を超えるお酒・漂白剤・モバイルバッテリー・液体バッテリー・単体のリチウム電池などです。

もちろん爆発物・危険物、麻薬類、生きた動物、わいせつな物品も禁止品です。

インボイスや送り状の品物名称が禁止品に該当する場合は、EMSやクーリエの集荷窓口担当が受け取りを拒否します。

またペットフードや食品の中には、中国政府が独自で輸入禁止をしているものがあります。はじめて送る時は事前に運送会社の顧客相談窓口に確認することをおすすめします。

航空機に載せられない禁止品※EMSのホームページより
機器に取り付けられたリチウム電池(一定の条件を満たすものに限ります。)は、国際郵便で差し出すことができます。
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3.個人貨物にならないものとは?

 

中国に住む個人宛に送った品物であっても、以下2つに該当する場合は、中国税関で転売等のビジネス目的(商用品)とみなされて、個人貨物扱いにならない場合があります。

①貨物の金額が規定を超えている場合

1出荷の品物価値合計(インボイス価格合計)が人民幣1,000元を超えていると、 個人貨物の範疇(はんちゅう)を超えていると判断され、商業貨物と同じ一般通関扱いになる場合があります。

2020年2月時点において人民幣1,000元は、日本円換算で約14,000円~15,000円、米ドル換算で約140$から150ドルです。
為替レートは変動するので貨物発送時にレートを確認するようにしましょう。

個人貨物として送る場合は、下記4つのパターンのいずれかである必要があります。

個人貨物扱いになる4つの出荷パターン

  1. 品物Ax2個(小計300元)と品物B×3個(小計600元)を1出荷(合計900元)で発送。
  2. 品物Ax8個(合計950元相当)を1出荷で発送。
  3. 1000元以上の品物Aを単品(1つだけ)で発送。
  4. 1000元以上のセット品(品物Aと品物A”)を1セットだけ発送。
例外として、1出荷、1品(1個)だけの品物は、申告価格の総額が人民幣1000元を超える品物であっても個人貨物として扱われます。例:申告価格30,000円のプラモデルを1個だけ送る場合など。
※ただし最終的には税関の判断となります。
品物A(500元相当)と品物B(900元相当)を1出荷で発送する場合、合計金額が1400元となり1000元を超えるので個人貨物扱いとなりません。
香港、マカオ及び台湾からの貨物に限は、申告価格の総額が1出荷あたり人民幣800元までです。

②貨物の数量が個人使用の範疇を超えている場合

内容品の個数が多い場合、個人貨物の範疇(はんちゅう)を超えていると判断され、商業貨物と同じ一般通関扱いになる場合があります。

通常、同じ種類やデザインの品物は10個までと言われていますが、10個未満でも個人貨物と見なされない場合があります。

最終的には税関の判断になりますが、高級腕時計・乳児用粉ミルク・健康補助食品など数量制限が厳しい品物を送る場合は、事前に運送業者または購入店に何個まで送れるか確認することをおすすめします。

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4.個人貨物でも関税は取られるのか?

 

個人貨物の場合でも郵便税とよばれる関税がかかります。

ただし、輸出入関税条例45条(1)により、1出荷の関税額合計が人民幣 50 元以下の場合や商業的な価値がない広告品及びサンプル品などは関税の徴収が免除されます。

尚、関税額は、品物の申告価格(インボイス価格)に中国税関当局が定める税率を乗じることで計算します。

関税額総計=申告価格(インボイス価格)×関税率
関税額総計=内容物に対する関税額の合計
中華人民共和国輸出入関税条例 2017年3月1日 第四次改訂版第45条の原文
中華人民共和国税関総署、中華人民共和国輸出入関税条例 2017年3月1日 第四次改訂版第45条
1.下記に記載の輸出入貨物については、関税の徴収を免除する。
(1) 関税税額が人民幣 50 元以下の 1出荷の貨物;
(2) 商業的価値のない広告品及びサンプル品;
(3) 外国政府又は国際組織が無償で贈与する物資;
(4) 税関で通関する前に損失した貨物;
(5) 入出境運送手段に積載される中途で必要な燃料、物料及び飲食用品
2.税関で通関する前に損壊を受けた貨物について、税関の認定する損傷程度により関税徴収を軽減する。
3.法律所定のその他の関税の徴収を免除し、又は軽減する貨物について、税関は、規定に基づき徴収を免除し、又は徴収を軽減する。
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5.個人貨物の関税率は何パーセントか?

 

個人貨物の関税(郵便税)の税率は、2019年4月9日に改正され、『食品・飲料・薬品・サプリメント』の税率は従来の15%から13%。『服・靴・雑貨・化粧品・電気製品』は25%から20%。ブランド品(時計など)の嗜好品はそのまま50%となりました。

詳細は、中華人民共和国入境物品分類表(中華人民共和国税関総署2019年第63号/2019年4月9日施行)に記載されております。

和訳版のダウンロードはこちらから。

中華人民共和国税関総署2019年第63号/2019年4月9日施行
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6.個人貨物の関税は誰が払うのか?

 

個人貨物の関税を支払うのは、通常荷受人です。関税を納税しなければ原則貨物は受け取れません。

ただし、民間クーリエサービス(国際宅配便)や日本郵便のUGS(ゆうグローバルエクスプレス)は、関税の荷送人払い(元払い)を受け付けています。

クーリエサービス(SF Express等)などでは、関税納付にあたり荷受人に指定フォームを送り、通関前に身分証ID、電話番号、写真などの記入をするように求める場合があります。
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7.関税を払わない場合どうなる?

 

関税が支払われない貨物は、荷受人に引き渡されません。

中国現地で破棄されるか、貨物の発送人(日本)に戻ることになります。

では、日本に返却された時の費用は誰が負担するのでしょうか?

EMSの場合、海外から返送にかかった料金の請求は原則ありません。

しかし、それ以外の民間クーリエサービス(国際宅配便)や国際小包・小型包装物・国際eパケットなどは、返送に要した費用(運送費、関税、諸経費)を発送人に請求します。

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8.個人貨物のインボイス価格設定

 

中国向けに品物を送る時は、EMSであろうが民間クーリエサービス(国際宅配便)であろうが、送り状とインボイス(INVOICE)を作ることが必須となります。

インボイスは、簡単にいうと内容物の価格明細書のことです。

インボイスに記載された品名、数量、価格情報をベースに中国の税関は税額を決定するため、正しい記載が必須です。

価格については、品物を購入した時の価格を書きます。もし、 品物の価格を忘れてしまったり、分からなくなった場合は、類似製品の価格を調べて記載します。

関税がかかるからといって、実際の物の価値より低い価格を記載していると中国税関で止められ、税関判断による高額関税を請求される場合があります。

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9. 貨物価格が1000元を超える場合

 

個人貨物のインボイス価格が1000元(約14000円~15000円)を超える場合は、複数回に小分けて出荷します。

例えば、8000円の服と12,000円の靴を送る場合は、1出荷で送ると1000元を超えてしまいますが、 8000円の服と 12,000円の靴、それぞれの送り状とインボイスを作成し、2出荷として別貨物として発送すれば大丈夫です。

ただし、2出荷分の運賃および現地での関税が取られるので運送費用は高くなります。

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10.中国の税関から要求される書類とは?

 

中国の荷受人は、貨物の通関手続きのために身分証明書のコピーを提出する必要がありますが、荷送人は提出不要です。

また、中国税関において貨物のインボイス価格(申告価格)に疑問を抱かれた場合、品物価格を証明するために購入時の領収書(つまりレシート)の提出を求められることがあります。

領収書の形式やフォームなどに指定はありませんが、 手書きのレシートや 無名の小さな免税店の領収書は、信じてもらえない場合があります。

逆に、日本の有名デパート(伊勢丹、高島屋)、大手ドラックストア(ダイコクドラッグ、マツモトキヨシ、サンドラック)のレシートは信じてもらいやすいです。

中国の税関は、大量のデーターを持っており、過去の通関データーから申告価格の妥当性を判断します。

もし、過去の通関データーベースで9000円とされていた品物が1000円のインボイス価格で申告されていれば当然怪しむことになります。

最終的には、税関担当者の判断となりますが、購入したときにもらった領収書やレシートに記載されてある金額を記載しておけば問題はありません。

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