英文契約書はできるだけ自分で読みましょう!

製品の仕様が決まっている標準品と異なり、産業機械や加工部品などの工業製品は、客先ごとに技術打合せをして仕様を決める必要があります。
特に高い技術を用いた製品の売買においては、相手先と秘密保持契約(ひみつほじけいやく、英語: Non-disclosure agreement、略称: NDA)などの契約書を締結する必要があります。

国際ビジネスにおいては英文契約書が標準であり、日系企業でないかぎりは日本語の契約書はまず有り得ません。海外ビジネスになれてない企業にとって、英語の契約書はとてもハードルが高いものですが、スピード感を持って契約書を締結しないと折角のビジネスチャンスを失ってしまうことがあります

大企業であれば法務部に国際ビジネス担当がいて、自社にとって有利な内容で契約書を作ることも出来まが、社内に海外契約書を読める人材がいない場合は、辞書を片手に一字一字読んでいくしかありません。
しかし、実際にやってみると分かるの思うのですが、英文契約書には独特な言い回しが多く、普通の辞書で調べただけでは理解が難しく、意味不明な翻訳になってしまいます。
翻訳会社に任せて日本語訳をしてもらう方法もあるのですが、外部に頼めば当然お金がかかります。そして何より、実際のビジネスに関わってない人が訳した文章では微妙なニュアンスが汲み取れなくなります。やはり、英文契約書は自社で読めることに越したことはありません。
では、どうやって英文契約書を読めばよいのでしょうか?

実は、英文契約書の要点を掴むためには2つのコツがあります

何も知識をもたず辞書を片手に英文契約書を読むのは、コンパスを持たずに砂漠を旅するようなものです。英文契約書独特の言い回しに戸惑い、契約書全体で何を言っているのか分からなくなる場合があります。
一方で、契約書を読むためのコツを知っている人は、たとえ細かな専門的な技術用語は分からなくてもスイスイ読むことが出来、また押さえておくべき重要ポイントも見逃しません。そのコツは2つあります。

コツその1:英文契約書の構成を知る事

契約書は、お互いの合意できるところを書面にて確認する為のものであり、誰が読んでも同じように解釈できるように、基本構成は決まっております。どこに何が書いてあるかしれば契約書を読む上で注意して読むべきところが見えてきます。

コツその2:キーワードを知る事

英文契約書は、必ず押さえておくべきキーワードがあります。その事を意識して読めば、契約書に書かれている不利な条件を把握することが可能となります。

英文契約書を読み方 3つのコツ

1.英文契約書の構成を知りましょう

難しい単語が用紙いっぱいに綴られている英文契約書は、見るだけで読む気が失せてしまいます。しかし、英文契約書はとても合理的に構成されており、ほとんど場合は、決まり文句の書き出しからスタートしており、その後で本題の契約内容を記載しております。構成を頭に入れておくだけでも、英文契約書は格段に読みやすくなります。

①書き出し部分
ほとんどの契約書の書き出しは、以下のような決まり文句を記載してます。

This Agreement, ~ (または、This Agreement is made/ entered ~)
【契約締結日及び契約当事者の特定(会社名、住所会社など)】

WITNESSETH:(または、Premises) ← 省略されることも多いです。
WHEREAS,~
【契約の背景や経緯(または、当事者の業務内容)】

NOW THEREFORE,~
【以上の背景や経緯を前提として合意するという内容を記載します】

※単語の意味
WITNESSETH :以下を証する
WHEREAS :~なので
NOW THEREFORE:そこで、それゆえに

②本体部分
本体部分は、通常下記の順序で記載してます。

定義条項:
契約書に出てくる用語の意味や定義、または契約の適応範囲などを記載します。※別資料に記載する場合もあります。
取決条項:
本契約において当事者同士が独自に取り決めた決まり事を記載します。ここが契約書の核心部分です。
一般条項:
契約期間、契約解除、秘密保持、知的財産の扱い方、準拠法、裁判や仲裁の管轄場所など、どの契約書でも記載される一般的な内容を記載します。

※トラブル時の金額が大きくなるような契約書では、準拠法や裁判、仲裁の管轄場所を当事者のどちらの国にするか慎重に検討する必要があります。

③末尾部分
署名部分になります。契約の当事者がお互いにサインをすることで、契約書の記載内容が承諾されたことを証します。

2.SHALLやMAYの助動詞がある文は丁寧に読みましょう

契約書は、当事者同士の義務や権利を明確にする為のものであり、この権利や義務を記載してある箇所は特に注意して読む必要があります。英文契約書の場合、義務を表す文にはSHALLを、権利を表す文にはMAYが入っている場合が多く、この2つの助動詞を意識しながら読むと、契約書の重要ポイントが理解しやすくなります。

♦ワンポイントアドバイス

shall は『~であるとする』という義務を表す助動詞ですが、shall notは、義務がないという意味ではありません。『~してはならない』という禁止、または『~できない』という不可能の意味ですので注意しましょう。尚、前述の通り mayは、『~することができる』という権利を表します。

3.大文字の単語を見つけたら、解釈を確認しましょう

文頭や固有名詞以外の単語で、大文字(単語の頭、または全部)が使われている場合は、契約書のどこかでその単語の意味が定義されています。単語の解釈が、自分の認識と合っているか確認をしましょう。
※固有名詞とは、国名・地名・人名・書名・ブランド名などのことです。

最後に、
自社で契約書が理解できるようになれば、不要な心配がなくなり、自信をもって相手と交渉できるようになります。是非、皆さんも英文契約書を読んでみましょう!