急加速でワクチン接種をすすめる中国

2021年に入り漸く世界でコロナウイルス用ワクチンの接種が始まりました。ニュースでは欧米の接種状況が進んでいると報じられていますが、実はワクチン接種回数でみると中国がダントツの1位で、2位アメリカを大きく引き離しています。

下図は、英国オックスフォード大学が運営するサイト「Our World in Data」のコロナワクチン接種数トップ6カ国のデーターです。

2021年5月29日時点で、中国のワクチン接種回数は6億回を超えており、2位のアメリカの実に2倍です。

参照元:Our World in Datan

中国のコロナワクチンメーカー

コロナワクチンの製造メーカーは、欧米企業が有名です。しかし、コロナワクチンの大国は、アメリカでもイギリスでもなく中国です。

中国のコロナワクチンメーカーの中で一番有名なのは、国営企業であるシノファーム(中国医薬集団/Sinopharm)です。

シノファームのコロナワクチンは、中国製として初めて世界保健機関(WHO)に緊急使用が承認されたグローバルワクチンです。すでにアルジェリア、カメルーン、エジプト、ハンガリー、イラク、イラン、パキスタン、ペルー、アラブ首長国連邦(UAE)、セルビア、セーシェルなど多くの国で接種されています。

2番目に有名な中国メーカーは、シノバック・バイオテック(科興控股生物技術/Sinovac Biotech)です。シノバックは、もともとインフルエンザ、鳥インフルエンザ、肝炎、日本脳炎、狂犬病などのワクチンを開発生産しており、優れた技術を有するバイオ医薬品メーカーです。

その他としては、中国人民解放軍の軍事医学研究院と共同開発しているカンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)、中国科学院微生物研究所と共同開発しているZFSW(重慶智飛生物)などがあります。

中国製コロナワクチンの特徴について

欧米大手メーカーファイザー、モデルナー、ビオンテックなどのコロナワクチンは、「mRNAタイプ」ですが、中国では「mRNAタイプ」はまだ実用化されていません。

ちなみにシノファームとシノバックは不活化タイプ、カンシノはウイルスベクタータイプ、ZFSWは組換えタンパクワクチンです。

中国メーカー大手が不活化タイプを選んだ理由は分かりません。しかし、不活化ワクチンは、インフルエンザワクチンなど予防接種で良く使われるタイプであり、感染予防率は低くなりますが、保管温度が低く設定できるのが特徴です。

また、カンシノのワクチンは、遺伝子組み換え型のウイルスベクターワクチンで、1回接種だけで効果があり、変異ウイルスにも有効と言われています。

コロナワクチンタイプ・接種数・感染予防率・保管温度

ワクチンの種類と特徴について

新型コロナウイルスワクチンを比較する時に、どうしても感染予防率ばかりに目がいってしまいます。

しかし、ワクチンといっても、不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン、ペプチドワクチン、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチンなど様々な種類のワクチンがあり、それぞれ特徴が異なります。

以下に代表的なワクチンタイプをご紹介します。

メッセンジャーRNAワクチン(mRNA)

米ファイザー(Pfizer)・米モデルナ(Moderna)・独ビオンテック(BioNtech)がこのタイプです。

コロナウイルスの遺伝子を複製したmRNAと呼ばれる人工遺伝子を脂質粒子でコーティングして作ったワクチンです。人工ウイルスと呼ぶ人もいます。mRNAワクチンを投与することで、人体の免疫系が活性化しコロナウイルスがもっているスパイクタンパク質を異物とみなし攻撃する抗体を作ります。

不活化ワクチン(滅活疫苗)

中シノファーム(中国医薬集団)・中シノバック(科興控股生物技術)がこのタイプです

感染能力を失わせた(不活化といいます)コロナウイルスを元として作ったワクチンです。ウイルスとしては死んでいるため体の中で増殖しないというメリットがありますが、複数回の接種しなければ抗体ができないという欠点もあります。

代表的な不活化ワクチンとしてインフルエンザワクチン、日本脳炎ワクチンなどがあります。

ウイルスベクターワクチン(腺病毒载体疫苗)

米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)・中カンシノ(康希諾生物)・英アストラゼネカ(AstraZeneca)・ロシアのスプートニクVがこのタイプです。

ベクターの語源は、ラテン語のVehere「運び屋」です。コロナウイルスに抗体する情報を持った遺伝子を人体に影響がないウイルス(ベクターウイルス)に組み込んで、体内の細胞まで運びます。このワクチンを接種すると体内で新型コロナウイルスの抗原となるたんぱく質が作られ、免疫が構築されます。

アドバイザー
カンシノは、遺伝子の運び役であるベクターウイルスに風邪の症状を引き起こすアデノウイルスを用いていると言われています。

組換えタンパクワクチン(重組蛋白疫苗)

米ノババックス(Novavax)、仏サノフィ―(Sanofi)、中ZFSW(重慶智飛生物)がこのタイプです。

大腸菌、酵母、動物細胞などを用いてコロナウイルスの抗原たんぱく質を人工的に作りだし精製してワクチンにします。投与後、抗原たんぱく質が細胞外から取り込まれ、ペプチド(たんぱく質の断片)に分解されて、抗体が作られます。