工業製品を輸出する場合、できるだけ早く貨物を客先に渡し、輸送の心配から解放されたいと思うものです。

特に高価な精密機械などを輸出する場合は、たとえ保険を掛けていてもお客様に渡すまでは気になります。

貨物の引き渡し場所は、インコタームズと呼ばれる貿易条件を使って当事者同士の責任範囲を明確にします。もし、輸出者である売主に近い所で貨物を引き渡したいのであれば、EXWまたはFCAを使います。

EXWは、Ex-Worksの略で、オックスフォードWEB辞典によると、Ex は Sold direct from、Worksは、A place or premises in which industrial or manufacturing processes are carried outと書かれており、これを日本語で一言で表現すると『工場渡し』になります。

一方、FCAはFree Carrierの略で、つまりキャリア―(運送人)渡しということです。

実際の契約書で貿易条件を取り決める時は、EXWやFCAの後に受け渡し場所を記入します。

EXW➕貨物引き渡し場所
or
FCA➕貨物引き渡し場所

例えば、当社の施設で貨物を引き渡したいとします。

その場合、EXW, Mitsutomi Corporation,JapanまたはFCA, Mitsutomi Corporation,Japanと見積書に記載します。

どちらで書いても、買主は運送人を手配し当社まで貨物を引き取りに来なければいけません。つまり、EXWでもFCAでも同じなのです。

しかし、ここで注意しておくことがあります、それはEXWとFCAではリスク移転場所が異なるということです。

EXWとFCAのリスク移転場所

先ほど、EXWとFCAの後に自社の住所を書けば、どちらも自社で貨物の引き渡しが完了すると説明しましたが、運送人のトラックに貨物を積み込む時に誰が責任を持つかという話になるとEXWとFCAでは解釈が異なります。

EXW の場合、売主は自社に貨物を用意しておくだけで良く、運送人のトラック上に積み込む必要はありません。

一方、FCA では、運送人のトラック上に貨物を置いてはじめて引き渡しが完了となります。手で運べる小さな貨物であれば、どちらでもよい話ですが、何百キロもある精密機械をFCA契約した場合、フォークリフトで機械をトラックに積み込むとき、万が一、落したら売主の責任になります。

EXWとFCAの違いを図で解説します

EXWのリスク移転時点

EXWのリスクの移転時点は売主の施設内であり、トラックへの積込みは輸入者である買主の責任範囲です。

FCA,CPT,CIPのリスク移転時点

FCA(CPT, CIP)は、運送人に貨物を渡すとリスクが移転します。積込み責任は売主側にありますが、荷卸しは買主側です。貨物の引き渡し場所は、売主施設内において利用運送人、フォワーダー、NVOCC等に引き渡す場合と、コンテナヤードまで持って行って実運送人(船会社)に渡す場合の2通りがあります。
注意:
貿易条件であるインコタームズを策定している国際商業会議所 (International Chamber of Commerce: ICC) は、FCA JAPANと書くのではなく、FCA , ABC CORP,1-2-3,XXXX,TOKYO,JAPANと出来るだけ具体的な場所を書くことを推奨してます。