世界にはテロ支援国家等の指定を国際社会から受け、各国から経済制裁を受けている国があります。2018年5月にアメリカ政府がイランに対し経済制裁を再開したのは記憶に新しいのではないでしょうか。

経済制裁対象国との取引で注意すべき点

経済制裁は国家間の話ではありますが、その国家との取引禁止やサービス禁止、渡航制限等といった処置に加え、その国家所在の企業との取引にも影響が有ります。
外航貨物海上保険には、以下の保険約款が適用されており、制裁に抵触する可能性がある時は、保険会社は保険の引受け、保険金の支払い、その他利益の提供を行うことができない旨が規定されています。

『Sanction Limitation and Exclusion Clause』:
No insurer shall be deemed to provide cover and no insurer shall be liable to pay any claim or provide any benefit hereunder to the extent that the provision of such cover, payment of such claim or provision of such benefit would expose that insurer to any sanction, prohibition or restriction under United Nations resolutions or the trade or economic sanctions, laws or regulations of the European Union, Japan, United Kingdom or United States of America.

(試訳)当会社は、この保険証券のもとで保険の引受け、保険金の支払いまたはその他の利益の提供を行うことにより、当会社が国際連合の決議にもとづく制裁、禁止もしくは制限を受けるおそれがあるとき、または欧州連合、日本国、連合王国もしくはアメリカ合衆国の貿易もしくは経済に関する制裁、法律もしくは規制における制裁、禁止、制限を受けるおそれがあるときは、いかなる場合も、保険の引受け、保険金の支払いまたはその他の利益の提供を行わない。

そのため、たとえ皆様の貿易相手自体は善良な企業であったとしても、その国が経済制裁の対象とされ、取引の内容が制裁に抵触していた場合には、保険会社は海上保険の引受を行わない可能性が有ります。

皆様のお取引先企業の所在する国家が経済制裁の対象になった場合に備え、留意すべき事を纏めましたので、一度確認してみましょう。

1.自社の取引が各国の制裁内容に抵触してないか

各国の行う制裁は取引の目的・行為・産品・技術・サービス等様々な取引を制裁の対象とします。自分たちの取引が制裁の対象になっているか否かを弁護士や保険会社等に相談するなどし、慎重な対応が必要になります。

※保険契約自体を規制する場合や、米ドル等の特定の通貨での決済を禁止する経済制裁もありますので、皆様の商材が対象となっていないからと言って油断は禁物です。

2.制裁対象者リストに注意

経済制裁の中には、特定の企業ないし個人との取引を禁止する事を規定するものもあります。取引相手がその制裁対象者に含まれているか否かの確認が大切です。制裁対象者は財務省のHPにある「経済制裁措置及び対象者リスト」にて確認できます。

制裁対象者に対して保険金支払いを行う事は、制裁対象者への利益の提供と見なされる可能性が有る為、保険会社は保険金支払いを拒否します。

もし保険金の支払を希望する場合は事前に経済制裁を行っている各国関係機関に承認を取る必要があります。

3.金融機関の対応確認も重要

たとえ保険会社が保険金支払いを可能と判断したとしても、保険金支払い手続きは海外送金になりますので、現地金融機関への送金手続きを行う日本側の金融機関が経済制裁対象国家に対する送金を拒否する可能性があります。その為、保険会社だけでなく金融機関の対応の確認も必要です。

実際に経済制裁対象国と取引が有るときには、上記1~3の点をよく確認し、事前に保険会社に相談が必要と憶えておきましょう。

これら5つの条件で輸出を行っている、または今後輸出を検討している皆様の中で、貨物の危険負担移転までの間について何か気になることがありましたら、ぜひ双日インシュアランス株式会社までご相談ください。