海外に向け商品を輸出するとき、輸出者は貨物にインボイス(INVOICE)と呼ばれる価格明細書を付けて発送します。

通常の貿易において輸入国の税関は、このインボイスに書かれてある価格にもとづいて関税額を決定します。

関税額=インボイス価格(CIF価格)× 関税率

ではインボイスに記載する価格はどうやって決めれば良いのでしょうか?

関税を少なくするために、わざと低い金額を記載したらどうなるのでしょうか?

今回は、インボイス価格の決定方法と罰則について書いてみたいと思います。

出荷書類のインボイス価格の決め方

インボイスに記載する価格は、輸入貨物の正当な経済価値を記載します。

通常正当な経済価値とは、買い手である輸入者が貨物の取引として売り手である輸出者に対し現実に支払う又は支払った金額(現実取引価格)のことを指します。

しかし、実際のビジネスでは、現実取引価格そのものが無かったり、正当な経済価値よりも低くなる場合があります。

貨物の現実取引価格と正当な経済価値が異なる場合

たとえば、機械や装置が保証期間内で壊れたため無償で発送するアフターサービス部品があるとします。

この場合、貨物は無償なので取引価格はゼロ円です。しかし、貨物の正当な経済価値はゼロ円ではありません。

また、別の取引とのバーターで取引価格が安くなっている貨物や日本国内市場向けの販売見本またはECサイトで委託販売をするために低い取引価格が設定された貨物なども、取引価格を貨物の正当な経済価値として使うことができません。

このような場合は、関税定率法で規定された手順にもとづいて実際の経済価値を決定しインボイスに記載します。

関税定率法によるインボイス価格の決め方

関税定率法(第4条の2から第4条の4)によるインボイス価格の決め方

ステップ1.同種・類似の貨物に係る取引価格にもとづいてインボイス価格を決定する。

※同種の貨物とは、輸入貨物の生産国で生産されたもので、形状、品質および社会的評価等すべての点で輸入貨物と同一であるもの
※類似の貨物とは、輸入貨物の生産国で生産されたので、輸入貨物とすべての点で同一でないが、同様の形状及び材質の貨物であって、その輸入貨物と同一機能を有し、かつ商業上の交換が可能であること

<ステップ1で価格が決まらない場合>

ステップ2.輸入貨物または同種・類似の貨物の国内販売価格にもとづきインボイス価格を決定する。

<ステップ2で価格が決まらない場合>

ステップ3.輸入貨物の製造原価にもとづきインボイス価格を決定する。

※ステップ2とステップ3は順番を入れ替える事が可能

インボイス価格の改ざんに対する罰則

インボイス価格が低ければ、それだけ支払う関税も安く抑えることができます。

税関からインボイスに記載した申告価格について問い合わせがあったとき、価格決定の根拠を明確に説明できれば良いですが、税関側に説明できない場合は罰せられます。

なぜ罰せられるかというと、ただしく申告し納税した者とそれを怠った者との間で不公平があってはならないからです。

日本の税関は、インボイス価格が現実支払い価格より低く輸入申告をしていることを発見した場合、輸入者に対し追加で納付すべき税額(増差税額)に5%または10%を乗じた過少申告加算税を課します。

まったく納税申告をしていなかった場合は、納付すべき税額の15%に相当する無申告加算税を課します。

※過少申告加算税も無申告加算税も納税額が一定額を超えるとさらに追加税が加算されます。

もし、インボイス価格や納付すべき税額の計算の基礎となる事実を隠蔽し、または仮装することによって適正な関税を納付しなかった悪質な輸入者に対しては、過少申告加算税または無申告加算税に代えて納付すべき税額に35%または40%を乗じた重加算税が課せられます。

インボイス価格の改ざんは、非常に大きな罰金を取られることを十分に理解し常に正しい価格(貨物の正当な経済価値)を記載するようにしましょう。

関税法第12条第1項・2項・3項の規定により、納税期日(通常は、輸入許可の日)までに納付しなかったペナルティーとして、延滞した日数に応じて支払うべき関税額に年率7.3%または年率14.6%の延滞税も課せられることも忘れてはなりません。