中国の雇用形態について

皆さんは、中国の雇用形態をご存知でしょうか?中国の雇用形態は、有期雇用契約無期限雇用契約一時的労働契約の3種類があります。

外国企業が中国人スタッフを雇用する場合、通常は有期雇用契約を締結します。そして、契約期間満了が近づくと労使間で再度条件を取り決め契約更新をします。

同一労働者との有期雇用契約は原則2回までしか許されておらず3回目からは無期限雇用契約になります。無期限雇用契約を締結すると、使用者は労働者の能力を認め、定年まで雇用するつもりで契約を結んだとみなさまれます。日本でいう正社員契約にあたります。

中国の労働契約法には、日本でいう『賞与』や『退職金』に相当する規定はありません。その代わりに経済補償金というものがあり、契約満了により労働者が退職する場合、使用者は経済補償金と呼ばれる手当金を労働者に支払う必要があります。なお、使用者と労働者が個別に退職時に支払う金額を取り決めている場合は、それに従うことなります。経済補償金の計算は、とてもシンプルで以下の通りです。

経済補償金
=勤務年数(N)×1ヶ月分の給与(税引き前+社会保険費)

会社都合で解雇する場合、退職金はN+αが基本です。

使用者が、有期雇用契約または無期限雇用契約の労働者を途中解雇する場合は、賠償金協議となります。これは前述の経済保証金(Nヶ月分の給与)にプラス●ヶ月分で計算します。労働者の年齢が高くすぐに次の仕事を見つからない場合などは、使用者は多めに上乗せします。

労働契約法によると同法の条項に違反して解雇する場合は、使用者は労働者に対し経済補償金(Nヶ月分の給与)の二倍の支払うとの記載があります。

同法違反でない解雇の場合、賠償金は経済補償金(Nヶ月分の給与)に1~3ヶ月分の月給をプラスすることで労使が合意する場合が多いそうです。

賠償金
=経済補償金(Nヶ月分の給与)+1~3ヶ月分の給与

解雇にあたっては誠意ある対応を!

会社都合で中国人スタッフを解雇する場合は、前述のとおり労働者との賠償金協議になります。もし、協議がまとまらない場合は、地元裁判所の労働仲裁になり、それでも合意にいたらない場合は本裁判となります。

WECHAT(日本で言うLINE)などSNSが発達している中国では、日本企業で働いている中国人スタッフ同士で労使交渉から裁判のやり方まで常に情報交換をしているそうです。使用者が理不尽な解雇をしようとすると本当に裁判になる場合があります。

中国に限らず一般社会では、会社を強い立場、労働者を弱い立場と認識します。よって、裁判所の判決の多くは、弱い労働者の権益をできるだけ守る方向になることは、承知しておく必要があります。

中国の友人から聞いた話し

日系企業で働いていた彼は、ある日突然人事部に呼ばれこう言われたそうです。

『会社の事業戦略見直しにより事務所が閉鎖となることが決まりました。ついては、社内労働法規に基づいて、あなたを含めた中国人スタッフを解雇することを決定し、解雇3ヶ月前の正式通知をいたします。退職金等の希望についてはこれから別途協議します。』

日系企業ではたらいている中国人スタッフの人達の中には、日本文化を愛し、日本メーカーで働くことを夢見ていた人たちが大勢います。彼もその一人で、一生懸命頑張れば日本企業は、必ず報いていくれると信じていました。

しかし現実は異なり、会社が言った『別途協議』とは口先だけで、彼が反論できる法的知識がないことをいいことに、まともな賠償金すらもらえず解雇されしまったそうです。彼はその時の企業側の対応に悔しい思いで一杯だったそうです。そして、何より辛かったのは、憧れていた日本企業で働くことの夢が持てなくなったことだと言ってました。彼は、その後自分で労働法を勉強し、泣き寝入りしない知識を身につけたそうです。

もちろん多くの日本企業は、誠実に中国人と仕事をしています。しかし、残念ながら一部の日本企業(特に、現地責任者である日本人駐在員)に問題があるのは確かです。明らかに会社都合であるにも関わらず、強引に経済補償金(Nヶ月間の給料)だけの支払いで済まそうとしたり、労働者に嫌がらせをして自己都合退職に追い込もうとするのは日本ではもちろん中国でも決してやってはいけないことです。

中国スタッフからすると、日本人駐在員は、企業の代表あり日本人の代表でもあります。海外だからといって好き放題をして企業と日本に泥を塗らないよう自分自身の行為を十分律する必要があると思います。

中国現地法人で中国人を雇用する時に重要となる中国労働契約法13項目(原文付)