中国人と日本人を諺(ことわざ)であらわすと

一个中国人是龍、 両个中国人是虫
(yī gè zhōng guó rén shì lóng 、 liǎng gè zhōng guó rén shì chóng)
訳:中国人は一人なら龍だが、二人になると虫になる

これは中国の一般人が、自分たちの国民性を言う時に使う言葉で、『中国人は一人であれば、まるで龍のごとく強いが、集まった中国人は一群の龍の群れにはならず、それぞれが主張し合い、一群の虫のように弱くなる。』という意味です。

この諺(ことわざ)を変形し、冗談半分で中国人は、日本人のことを以下のように言います。

一个日本人是虫、 両个日本人是龍
yī gè rì běn rén shì chóng 、 liǎng gè rì běn rén shì lóng
一人の日本人は虫だが、二人になると龍になる

虫と龍を言い換えただけですが、この意味は、『日本人は、個々の力は虫のように弱いが、群れになると龍のごとく強い力を持つ。』という意味です。虫という表現の是非はさておき、商売において中国人は、個人の利益を守ることが日本人より格段に上手で聡明であることは間違いありません。もし、中国人と1対1で商売の勝負をするとたいていの日本人は負けてしまいます。

ただし、ものごとには、表と裏があり、日本人は、組織の一員として動き組織の利益を確保する能力が中国人より優れてます。もし、日本企業と中国企業が組織力で勝負するのであれば、日本企業は、烏合の衆となった中国企業に勝つことでしょう。

日本人駐在員が失敗する中国人スタッフの管理法

この諺(ことわざ)を知らず、中国文化の知識が浅い日本人駐在員は、自己流で中国人スタッフと関わるしかありません。そして、多くの日本人駐在員は、一人のゴマすり上手な中国人スタッフを自身の腹心とし、彼または彼女を利用して他の中国人スタッフを監視または管理する方法を選ぶそうです。

この方法を中国人の友人は、”イヌイット(エスキモー)理論”と呼んでおります。なぜなら、イヌイットは、そり(橇)を引っ張る犬達に全力を出してもらうように、一番前を走る犬にベストな待遇をあたえて、その犬を鏡として、他の犬達を従わせようとするからだそうです。※簡単に言うと、待遇差別管理。

しかし、このイヌイット理論を上手く運用するには2つの条件をクリアーすることが前提となります。一つは、管理者が、中国人スタッフから見て常に理想的なリーダーであること、もう一つは、組織として本当に役立つ人材を優遇することです。

イヌイット理論は、有効な管理手段ですが、本気で実行するには、きわめて強力で厳格なリーダーシップが必要となるため、もめごとや言い合いを嫌う日本人は、本来あまり得意ではありません。しかも、先ほどの諺(ことわざ)にある通り、一人の日本人と一人の中国人が知恵を比べ合っても、中国人の方が一枚上手である場合が多く、自分では上手く中国人スタッフを利用しているつもりでも、気付かない内に逆に利用されてしまっているケースが非常に多いそうです。

本来リーダーは、組織の発展に本当に貢献し頑張っている人物を評価しなければなりません。これは、中国も日本も同じです。しかし、仕事ができないゴマすり上手な中国スタッフを腹心とし、そのスタッフに利用されているようでは、本当に組織のために頑張っている有能な中国人スタッフのやる気がやがて失せてきます。そして、頼りにならないと判断されると、それぞれが個人プレーに走りだし、最悪は言うことを聞かなくなります。

では、どうすれば良いのか?

失敗する中国人スタッフの管理法は分かりましたが、では、日本人駐在員はどのように中国人スタッフと接すれば良いのでしょうか?

長年日系企業で働いてきた中国人スタッフいわく、もっとも簡単な管理方法は、真誠(zhēn chéng) 、つまり、真心・真実・誠意をもって中国人スタッフに対応することだそうです。中国スタッフを、上手く使ってやろうと考えるのではなく、平等な立場にたち、信頼関係を作ることがなにより大事です。

なんだ、当たり前の話だと思いますが、これは、個人対個人の知恵比べを避けることにも通じており、組織での動きが得意な日本人にとって、非常に理にかなった方法です。

対応例:
中国スタッフを、上手く使ってやろうと考えない。
中国人と日本人を平等に扱い信頼関係を作る。
中国人スタッフだけに難しい仕事を押し付けたりしない。
良い事ばかり言う中国人スタッフの意見だけに耳を傾けない。

また、人事評価にあたっては、日本人駐在員の個人判断でなく、組織として評価基準を明確にし、それを中国人スタッフ全員が納得する形で公正に運用すれば、大きなトラブルは減らせます。

中国人と日本人のお互いの強さを尊重することが、できれば、自社の製品やサービスをもっと世界に広げることも可能です。中国事務所の業績が伸びないと悩んでいる経営者さまは、一度、現地中国人スタッフとの関わり方を見直してみて下さい。

因みに、中国武術において、究極の到達点は、無招無式(wú zhaō wú shì)、無懈可撃(wú xiè kě jī)だそうです。この意味は、どんなことにも慌てず、冷静に、また如何なる策も施さなければ、一部の隙もないという意味ですが、商売においては、スタッフ同士が中国人と日本人という意識をなくし、同じ仲間として一体化した時が、究極の到達点だと言えます。