三国間貿易って何?

三国間貿易(さんごくかんぼうえき)は仲介貿易とも呼ばれる貿易形態の一つです。英語ではIntermediary Trade、中国語で三方貿易, ,转口贸易(轉口貿易), ,中转贸易(中轉貿易)などと言います。

通常の貿易は、売手と買手の2カ国間で行われますが、三国間貿易は、売手(メーカー)と買手(ユーザー)の間に第三国の仲介者が介在し3カ国間で行われます。

三国間貿易のポイントは『仲介者を介して商品取引をおこなうため売手(メーカー)と買手(ユーザー)との間に契約関係は無いが、商品は売手(メーカー)から買手(ユーザー)に直送される。』ということです。通常貿易との違いは下記の通りです。

通常貿易と三国間貿易の違い

■通常貿易(二国間貿易)
契約:売手(メーカー)⇔買手(ユーザー)
物流:売手(メーカー)⇒買手(ユーザー)
■三国間貿易
契約:売手(メーカー)⇔仲介者、仲介者⇔買手(ユーザー)
物流:売手(メーカー)⇒買手(ユーザー)

仲介者としてのメリットとデメリット

仲介者としてのメリット(利点)

1.消費税や関税がかからない

外国商品を日本国内に持ち込む場合は、関税や消費税が発生します。しかし仲介者が国外において購入した商品を日本国内に輸入することなく他の国へ転送する三国間貿易は、国外取引に該当するため日本国税の課税対象となりません。

国税庁の見解

事業者が国外において購入した資産を国内に搬入することなく他へ譲渡するいわゆる三国間貿易の場合は、国外に所在する資産の譲渡であり国外取引に該当しますので、その経理処理のいかんに関わらず課税の対象とはなりません。
国税庁ホームページ『 NO.6210 国外取引』より

2.輸送時間とコストが短縮できる

商品を仲介者である日本国内に輸入せずに、売手(メーカー)から買手(ユーザー)に直送できるので運送時間の短縮および運賃や保険料などのコスト削減ができます。

仲介者としてのデメリット(リスク)

1.買手に仕入れ価格が漏れる可能性があります

三国間貿易では、書類のコントロールがとても重要になります。もし失敗すると商品の買手(ユーザー)である輸入者側に仲介者の調達価格(仕入れ値)が流出してしまい、場合によっては買手(ユーザー)との信頼関係を壊し商売を失うことになります。

2. 買手が売手と直接取引をするリスクがあります。

商品の買手(ユーザー)が商品と一緒に添付された運送書類の荷送人(Shipper)名などから仲介者の調達ルートを調べ、仲介者を外して直接取引をされる可能性があります。

仲介者が確認すべき3つのこと

1
出荷書類の確認

仲介者として輸出および輸入通関用インボイス、パッキングリストのShipper(荷送人)、Consignee(荷受人)、Bill to(代金請求先)、Price(価格)の記載内容を確認します。まれに輸出地または輸入地の税関から取引エビデンス(証明書類)の提出を求められることがあるので、特別な事情がない限り、輸出地のインボイスには売手(メーカー)と仲介者との契約金額、輸入地のインボイスには買手(ユーザー)と仲介者の契約金額を記載します。

2
貿易実務担当者の確認

三国間貿易で実務作業をする輸出書類作成者、書類提出者、国内運送業者、輸出通関業者、海上運送業者、輸入通関業者、国内運送業者がそれぞれ誰なのか確認します。仲介者として注意が必要なのは買手(ユーザー)との貿易条件です。EXW、FOB、FCA、CIFで契約している場合は、買手(ユーザー)が輸入通関をする必要があります。よって、仲介者は商品出荷後、買手(ユーザー)に輸入通関用のインボイスとパッキングリストを送ってあげる必要があります。

3
インボイス差し替えポイントの確認

売手(メーカー)は、輸出地の税関に商品価値を申告する必要があります。手続きとしては、商品の輸出者である売手(メーカー)がインボイスと呼ばれる商品価格明細書を作成し、輸出通関業務を代行するフォワーダー(運送事業者)や乙仲業者(通関業者)に渡します。インボイスに記載する価格は、特別な事情がなければ売手(メーカー)と仲介者との取引金額を記載しますが、この価格がそのまま買手(ユーザー)渡るのは仲介者として良い事ではありません。よって、輸出地のフォワーダーや乙仲業者に対して、輸出通関用インボイスを買手(ユーザー)または買手(ユーザー)が指定した輸入地のフォワーダーや乙仲業者に絶対に渡さないように指示をする必要があります。このように輸出通関用インボイスの差し替えるところを、Switching Invoiceと呼びます。

三国間貿易は合法?非合法?

契約と物の流れが異なる三国間貿易は法律上問題ないか心配になる人もいますが、日本の法律において三国間貿易(仲介貿易)は禁止されていません。
ただし、対象貨物と輸出先が、外為法に基づく輸出貿易管理令別表第1に掲げる貨物および国・地域に該当する場合は、事前に経済産業大臣の許可を得る必要があります。

まとめ、三国間貿易を成功させるには?

三国間貿易は、上手に運用すれば売手(メーカー)、仲介者、買手(ユーザー)の三者それぞれメリットがあります。しかし、通関用書類が仲介者の手を離れて一人歩きし易いためコントロールが難しい取引です。

三国間貿易を成功させるには、輸出通関書類(とくにインボイス)の管理がとても重要です。そのためには、売手(メーカー)と緊密な関係を構築し、信頼関係がある輸出通関業者(乙仲)、フォワーダーを使う必要があります。

経済のグローバル化や電子商取引(eコマース)の普及にともない三国間貿易をする日本企業は増えております。本記事に記載のメリットとデメリットをよく理解して仲介者として円滑な貿易ができるように願っております。