国際宅配便の貿易条件について

あなたが売主(輸出者)だとします。海外の買主から『運送費を支払うので注文した品物をDHL,FEDEX,UPSなどの国際宅配便で輸送して欲しい』と依頼を受けました。この場合、あなたが見積書に記載する貿易条件は、FCA(運送人渡し)または、EXW(工場渡し)のどちらを書くべきでしょうか?

国際宅配便が、あなたの会社または工場に荷物を引き取りに来るのであれば、FCAまたはEXWのどちらでも、あなたの出荷作業は同じです。
つまり、会社・工場・製造所・倉庫などで、梱包した製品を買主の指定した国際宅配便業者に渡すだけです。製品を渡した後の輸送費や輸送中のトラブルは、買主の責任であり一切考える必要はありません。よって、実務的には、どちらでも構わないとも言えないことはありません。しかし、FCAとEXWではリスク移転で違いがあります。

FCAとEXWの違いについて

FCAとEXWでは一つだけ違うところがあります。それは、運送人である国際宅配便業者に荷物を受け渡す時の責任範囲です。
FCAでは、売主は製品を運送人に引渡す(納品する)まで行う必要があり、引渡場所を売主の会社や施設内とした場合は、荷物の積み込みは売主の義務・責任となります。よって、国際宅配便業者がトラックで引き取りに来た場合は、売主がトラックに製品を積み込む必要があります。

一方、EXWでは、売主は製品を買主の処分に委ねた時に引き渡し義務を果たすことになるので、引渡場所を売主の会社や施設内とした場合は、荷物の積み込みは買主の義務・責任となります。よって、国際宅配便業者がトラックで引き取りに来た場合、売主は荷物の置いてある場所まで国際宅配便業者を案内するだけでよく、荷物の積み込み義務はありません。参考までにインコタームズ2010の原文は下記の通りになります。

結論として、精密機器や重たい装置を輸出する場合は、EXWで契約できれば、トラックなどの積む込みも買主の義務・責任となるので売主にとっては一番良い条件だと言えます。一方、荷物が小さく運送業者が会社の事務所まで取りに来て手渡しで渡せるような製品であれば、FCA、EXWのどちらでも大差はないです。

FCAのリスク移転

FCA(Free Carrier)は、日本語に訳すと運送人渡しと呼ばれております。売主の視点から見ると、買主の指定した運送人と取り決めた場所で荷物を渡すまでの費用と破損責任を負います。フリーキャリアーという名前の通り、荷物を運送人渡してしまえば、一切の責任から解放されフリーになります。荷物を渡す場所は契約によって異なり、売主の会社や工場の時もあれば、コンテナヤードや鉄道の駅になる場合もあります。

EXWのリスク移転

EXW(Ex Works)で日本語では工場渡しと呼ばれております。売主の視点から見ると、売主の会社、工場、製造所、倉庫などで、製品を買主に渡す(処分を委ねる)だけです。製品を渡した後の輸送費や輸送中のトラブルは、買主の責任なので売主は一切考える必要はありません。
インコタームズ原文
EXW/Ex Works
“Ex Works” means that the seller delivers when it places the goods at the disposal of the buyer at the seller’s premises or at another named place (i.e.,works, factory, warehouse, etc.). The seller does not need to load the goods on any collecting vehicle, nor does it need to clear the goods for export, where such clearance is applicable.

FCA/Free Carrier
“Free Carrier” means that the seller delivers the goods to the carrier or another person nominated by the buyer at the seller’s premises or another named place. The parties are well advised to specify as clearly as possible the point within the named place of delivery, as the risk passes to the buyer at that point.
出展:ICC Incoterms® rules 2010