中元節(zhōng yuán jié)は、毎年旧暦の7月15日(現在のカレンダーで8月中旬頃)に行われる中国の伝統行事の一つです。中元節には、鬼が最も多くさまようとされ、一般家庭やお店などの軒先にお供えものを並べたり、あの世で使う紙のお金や線香を焚いて霊魂を慰めるしきたりがあります。この日に、中華圏に出張に行くと会社や商店の玄関に色とりどりのお供え物があるのを目にします。中元節の由来や習慣について見ていきましょう。
中元節の由来と意味
中元節の由来は、古代中国の神祭祀活動にまで遡ります。農業の豊作を祈願し、自然の恵みに感謝する日として、満月の時期にあたる旧暦7月15日に行われた「跳月」という祝祭が起源とされています。この祝祭では、人々が集まり歌や踊りを通じて月を崇拝し、神々や祖先に敬意を示しました。
時代はすすみ、道教で旧暦7月15日を「地界を司る地官大帝の祭日」として中元節と呼ぶようになりました。道教の世界では、この中元節に地獄の門が開き、亡者の霊魂が一時的に赦されると信じられており、別名「鬼節(guijie)」とも呼ばれています。
道教には、3つのお祭りがあります。中元節は、真ん中の地宮様のお祭りになります。
・上元節—天官様のお祭り(旧暦1月15日)
・中元節—地官様のお祭り(旧暦7月15日)
・下元節—-水宮様のお祭り(旧暦10月15日)
やがて中元節は、仏教の「安居」の伝統と「目連救母」の話と融合し、盂蘭盆会(うらぼんえ)と呼ばれる死者の魂を供養し、祖先の霊を慰める行事となります。西暦538年(中国の南北朝時代)に仏教保護で有名な、梁の初代皇帝 蕭衍(しょうえん)が、盂蘭盆会を主催して以降、この習慣は中国全土に広がり、やがて「お盆」として日本に伝わりました。日本では、お盆が仏教行事となっているのはこのためです。
安居(あんご)とは、雨季の3ヶ月(旧暦4月16日から7月15日)、僧侶が一ヶ所に籠って静かに修行することです。
「目連救母」とは、お釈迦様の弟子”目連尊者”が餓鬼道に堕ちた母親を救うという内容のお盆の定番法話です。
中元節にやってはいけないこと
中元節は、霊が最も多くさまよう時期とされているため、この日に特定の行動を避けるべきとされています。以下は、中元節に気をつけるべき代表的な禁止事項です。
- 夜に出歩かない:霊に出会うリスクが高いため、夜の外出は控えるべきです。また、川や海などの水辺にも近づかないほうが良いとされています。
- 不吉な話をしない:霊や鬼の話は、この日に限って避けるのが望ましいです。代わりに「鬼」という言葉の代わりに「好兄弟」と言うことがあります。
- 風鈴を枕元に吊るさない:風鈴の音が霊を引き寄せると信じられています。
- 夜遊びや夜更かしをしない:霊の活動が活発になる時間帯に外出するのは避けるべきです。特に、本名を呼ばれると霊に取り憑かれる恐れがあるため、ニックネームを使うようにしましょう。
- お供え物を盗み食いしない:お供え物は霊に捧げられたものであり、手をつけるのは冒涜とされます。
- 夜に洗濯をしない:洗濯物に霊が取り憑く可能性があるため、夜間の洗濯は避けるのが無難です。
- 道端に落ちているお金を拾わない:霊が置いたものである可能性があるため、触れない方が良いです。
- 口笛を吹かない:口笛の音が霊を呼び寄せると考えられています。
まとめ
中元節は、中国の伝統的な祭りであり、死者の霊魂を慰めるための大切な日です。この日には、霊を尊重し、特定の行動を避けることで、平和な過ごし方を心掛けることが大切です。中元節の意味を理解し、習慣や禁忌を守ることで、伝統的な文化を尊重しつつ、安全に過ごすことができるでしょう。