日本から海外に書類や小形の物品を安く早く送りたいとき、皆さんはどこの運送業者を使いますか?

本記事では、ビジネスなどでEMSを初めて利用する方に『EMSとは何か?』『どんな書類が必要で、どうやって書くか?』を分かりやすく解説いたします。役立つ豆知識もたくさん掲載しているのでご参考にして下さい。

 

国際スピード郵便、EMSとは?

EMS(イーエムエス)は国際郵便サービスの一つで正式名称を『Express Mail Service(国際スピード郵便)』といいいます。

EMSは各国の郵便事業体ネットワークを利用した貨物運送サービスであり、世界120以上の国・地域に物品を送ることができます。

同じようなサービスを提供している会社として、FEDEX(フェデックス)、DHL(ディ―エイチエル)、UPS(ユーピーエス) などの民間国際宅急便会社がありますが、EMSは各国の郵便局が事業を行ってます。

日本では1975年に郵政省がEMSサービスを開始しました。郵便局が民営化された後は日本郵便株式会社が運営しています。

貨物の出荷方法は、『ゆうパック』と同じで郵便局の窓口に貨物を持ち込めば出荷できます。また、電話すれば自宅や会社まで集荷にも来てくれます。

 

EMSの優れているところ

EMSの優れている点は、何といっても『運送費が安い』ことです。

例えば、重さ2キロの小型貨物をシンガポールまで送る場合、FEDEX、DHL、UPSなどの国際宅急便だと12,000~17,000円程度かかります。

しかし、EMSならたったの3,300円(※2019年5月1日時点)で済みます。また紛失や破損時の補償貨物配送状況の追跡サービスもあります。

EMSが安い値段でサービスを提供できる理由は、各国の郵便事業体ネットワークを利用しているからです。ちなみにEMSの貨物は、一般貨物と異なり税関で輸出または輸入申告(通関手続き)が要りません。

EMSの補償額について
EMSの損害要償額は、貨物の価値に関わらず2万円です。それ以上の補償額を求めるときは、補償枠を2万円増やす毎に50円の追加料金がかかります。増額できる最高損害要償額は200万円です。郵便局リンク:『EMS損害補償制度』
EMSの通関手続き
EMSは一般貨物のように通関手続きがありません。国際郵便交換局と呼ばれる所で税関職員が検査するだけで輸出入が許可されます。
 

EMS利用における3つの注意点

EMSは、サンプル品・無償品・書類などを送るときにとても便利なサービスですが、有償品を送る場合は、以下について注意が必要です。

①運送費の着払い(荷受人払い)はできません。

輸送費は元払い(発送人払い)だけです。FEDEX、DHL、UPS、OCSなどのクーリエサービスのように元払い(発送人払い)と着払い(受取人払い)を選ぶことはできません。

➁輸入関税の負担は受取人(荷受人)になります。

貨物の内容物や価格によっては、受取人(荷受人)の国で、関税や消費税などの税金の支払いが発生することがございます。その場合、発生した関税等は、受取人(荷受人)の負担となります。

➂通関手続きができません。

貨物の合計金額が20万円を超える場合は、輸出通関が必要となります。しかし、EMSは正規の通関手続サービスは提供してないため、発送人(荷送人)自らが輸出通関業者(乙仲業者)を見つけて輸出通関手続きを行う必要があります。同様に、受取人(荷受人)の国でも貨物の内容や金額によっては正規の通関手続きが必要となる場合があります。

日本郵便の通関手続き代行
EMSで送った貨物が正規の通関手続きが必要な場合、日本郵便でも通関業務の代行をしてもらえます。郵便局リンク:『日本郵便の通関手続き代行サービス』
 

EMSで送れる品物サイズと重量

EMSで送る貨物は以下の3条件を全て満たす必要があります。

  • 梱包した状態で一番長い辺が1.5メートル以内であること
  • 梱包した状態で長さと横周りの合計が3.0メートル以内であること
  • 梱包した状態で総重量が30Kg以内であること
大きさ重量制限の例外国
2019年5月1日時点、以下の国向けの場合は、サイズと重量の制限が異なるので郵便局リンク: 『大きさ・重量制限一覧表』 より個別に確認が必要です。

アメリカ、アルジェリア、アルゼンチン、イスラエル、イラク、イラン、ウクライナ、ウルグアイ、エジプト、エルサルバドル、オーストラリア、オマーン、ガボン、カタール、キューバ、グアム、コスタリカ、サイパン 、シエラレオネ、チュニジア、ジブチ、シリア、ジンバブエ、スペイン、セネガル、ソロモン、タンザニア、中国、トーゴ、トリニダード・トバゴ、ニュージーランド、バーレーン、パラグアイ、バングラデシュ、フィジー、フィリピン、ブータン、ブルガリア、ポーランド、ボツワナ、ホンジュラス、マケドニア、マダガスカル、マルタ、南アフリカ共和国、ミャンマー、メキシコ、モーリシャス、モルディヴ、ラオス、リトアニア
※郵便局リンク:『大きさ・重量制限一覧表』
 

EMS利用時に必要な書類

書類を送る場合に必要な書類

EMS書類用ラベル(送り状)×1部で大丈夫です。

EMS書類用ラベル(送り状)

物品を送る場合に必要な書類

中国・台湾・韓国・香港・マレーシア・シンガポール・ベトナム・タイ向けの場合は、物品用ラベル(送り状)×1部、インボイス×1部、国際郵便の危険物申告書×1部の合計3種類の書類があれば大丈夫です。

例外事例
アメリカ・カナダやヨーロッパの一部国向けインボイスが2部以上必要であったり、物品内容によっては原産地証明書や衛生証明書などの提出を求められる場合があります。郵便局員に荷物を渡す前に郵便局リンク:『EMSの発送に必要な書類』を見て必要なインボイス数を確認しておきましょう。
物品用ラベル(送り状)
インボイス
危険物申告書
 

物品用EMSラベル(送り状)の書き方

物品用EMSラベルの記載例

① 発送人(荷送人)欄

貨物の発送人(荷送人)の正確な住所と電話番号、FAX番号を英語で記入します。英語のあて先は日本語と逆になり、上から会社名(または氏名)、アパートなどの建物名と部屋番号、番地、丁目(または町村名)、市区名、都道府県名、郵便番号の順番で記入します。

記入例:

日本語:〒123-4567 日本国東京都千代田区鍛冶町1丁目1-23-4 MTビルディング 三富株式会社 日本太郎

英語:Tarou Nihon Mitsutomi Corporation MT-Building, 1-23-4, Kajicho 1-Chome, Chiyoda-Ku, Tokyo 123-4567, JAPAN

電話番号やファックスは、国際電話番号を記載します。市外局番の最初の『0』を取って、頭に国番号(日本は『81』)を付ければ国際電話番号になります。携帯電話の場合も、最初の『0』を取って、頭に国番号(日本は『81』)をつけます。

英語住所の自動変換サイト
英語住所の書き方が分からない方は、日本語の住所を自動で英語変換するサイトを使うと便利です。
変換サイトリンク:『英語住所自動作成サイト』

記入例:固定電話の場合
03-1234-5678 ⇒ +81-3-1234-5678

記入例:携帯電話の場合
090-1234-5678 ⇒ +81-9-1234-5678

➁ 受取人(荷受人)欄

記入方法は、①発送人(荷送人)の書き方と原則同じです。

字体は、小文字の方がスペルチェックをしやすくなります。しかし、国名だけは大文字で記入します。

中国や台湾などに送る場合、住所を漢字で書いても良いですが、中国や台湾で使う漢字は、簡体字繁体字と呼ばれており日本とは字体が異なります。よく分からない場合は無理に漢字を使わず英語で書くことをお勧めします。

電話番号に内線がある場合は、末尾にExtensionの略であるExt.をつけて呼び出し番号を記入します。例: +81-3-1234-5678 [Ext.1234]

受取人(荷受人)の名前には必ず。Mr. (男性/ミスター)、Ms.(女性/ミズ)、 Dr.(博士や医師/ドクター)、Prof.(大学教授/プロフェッサー)など敬称を付けます。ここで注意が必要なのは敬称の略であることを表す『ピリオド』を忘れないことです。

また、敬称の後は、姓(Last name)だけか、名(First Name)+ 姓(Last name)のフルネームにします。親しいからといって、Mr.Johnsonのように名前(First Name)だけにするとマナー違反になります。

記載例(Johnson Wangさんの場合);

Mr.Wang またはMr. Johnson Wang。(×NG—Mr.Johnson)

敬称の正式名称
Mr.=Misterの略称、Dr.=Doctorの略称、Prof.=Professorの略称、Ms.=Mrs.とMiss.を合成した造語です。※Ms.は略称ではありませんが、Mr.と同様にピリオドを付けます。
女性の敬称に関する注意点
Mrs.(既婚女性/ミセス)やMiss.(未婚女性/ミス)はビジネスでは使いません。男性は既婚と未婚を分けずにMr.(ミスター)と呼ぶのに、女性だけ既婚と未婚で分けるのは差別であるという話があり、現代では女性も既婚と未婚を分けないMs.(ミズ)を使います。

➂内容物等の記載

内容品は、Mechanical Parts、Electrical Goods、Toolsなど曖昧な表現は避け,具体的な物品名称を記入します。適当に書いていると税関審査で引っかかり最悪は貨物が税関で止められてしまう場合があります。もし、品物数が多く書ききれない場合は、『See the attached document』と記載して別用紙に記載します。

HSコード(※)は、記入の義務はありません。通関にかかる時間が短縮されることから、もし分かるのであれば上6桁を記入します。

内容品の原産国は、日本で作った製品であればJAPANと記入します。

内容品の正味重量は記入した内容品の重量です。もしハサミが2本あれば、2本の合計重量を記入します。

内容品の価格も同様で2本あれば2本の合計金額を記入します。たとえ、贈物や商品見本であったとしても0円はNGです。販売したら幾らになるのかモノの価値を記入します。

HSコードとは?
国際条約(HS条約)で定められた製品コードです。日本では「輸出入統計品目番号」、「関税番号」、「税番」などと呼ばれております。関税率はHSコードによって規程されているため、HSコードを特定しなければ関税額は分かりません。HSコードの上6桁はHS加盟国・準拠国共通です。尚、7桁目以降は各国独自ルールで決めます。※米国はHTS(Harmonized Tariff Schedule)と呼ばれる独自のコードで商品分類されています。

➃貨物の種類

友人や身内に物を贈る場合は、贈物をマークします。サンプルや無償提供品の場合は、商品見本をマークします。チェックを忘れると郵便局で貨物の輸送が止められる場合があります。必ずマークをしましょう。

➄内容品の日本円換算合計

内容品の価格がドルなど外貨で記載していても、日本円の商品合計金額を記入します。

➅危険物でないことの確認

内容品に危険物が入っていない事を示すために「X」を記入します。

危険品とは?
EMSで送れない危険品にはライター用燃料、花火、マッチ、ヘリウムガス、カセットコンロ用ガス、漂白剤、バッテリーなどがあります。郵便局リンク:『 国際郵便として送れないもの』 を確認してください。

➆署名

日本語または英語のどちらかで署名します。

➇貨物の箱数

もし箱数が1個なら「1番目/1個中」、もし2つの箱を同じ住所へ送る場合は、「1番目/2個中」「2番目/2個中」とそれぞれのEMSラベルに書きます。

⑨損害要償額

最低補償金額である20,000円を超える損害補償を希望する場合は金額を記入します。

EMSの補償額について
EMSの損害要償額は貨物の価値に関わらず2万円です。それ以上の補償額を求めるときは、補償枠を2万円増やす毎に50円の追加料金がかかります。増額できる最高損害要償額は200万円です。郵便局リンク:『EMS損害補償制度』
 

EMS用インボイス(Invoice)の書き方

インボイス記入例

➀インボイス作成日と作成地

インボイス作成日にはインボイスを作成した年月日を英語で記入します。アメリカ式の場合は月を頭にして『May 1st, 2019』、イギリス式は日を頭にして『1st May 2019』になりますが、どちらを使っても大丈夫です。

インボイス作成地には、インボイスを書いた場所(国)を書きます。日本で書いた場合は『JAPAN』と記入します。

➁ご依頼主(Sender / Shipper)

貨物の発送人(荷送人)の正確な住所と電話番号、FAX番号を英語で記入します。英語のあて先は日本語と逆になり、上から会社名(または氏名)、アパートなどの建物名と部屋番号、番地、丁目(または町村名)、市区名、都道府県名、郵便番号の順番で記入します。

字体は小文字の方が自動スペルチェックをしやすくなります。ただし国名だけは、大文字で記入します。

記入例:

日本語:〒123-4567 日本国東京都千代田区鍛冶町1丁目1-23-4 MTビルディング 三富株式会社 日本太郎

英語:Tarou Nihon Mitsutomi Corporation MT-Building, 1-23-4, Kajicho 1-Chome, Chiyoda-Ku, Tokyo 123-4567, JAPAN

記入例:固定電話の場合
03-1234-5678 ⇒ +81-3-1234-5678

記入例:携帯電話の場合
090-1234-5678 ⇒ +81-9-1234-5678

➂お届け先(Addressee / Consignee)

記入方法は、➁ご依頼主(Sender / Shipper)の書き方と原則同じです。

中国や台湾などに送る場合、住所を漢字で書いても良いですが、中国や台湾で使う漢字は、簡体字繁体字と呼ばれており日本とは字体が異なります。よく分からない場合は無理に漢字を使わず英語で書くことをお勧めします。

電話番号に内線がある場合は、末尾にExtensionの略であるExt.をつけて呼び出し番号を記入します。例: +81-3-1234-5678 [Ext.1234]

受取人(荷受人)の名前には必ず。Mr. (男性/ミスター)、Ms.(女性/ミズ)、 Dr.(博士や医師/ドクター)、Prof.(大学教授/プロフェッサー)など敬称を付けます。ここで注意が必要なのは敬称の略であることを表す『ピリオド』を付ける事です。

また、敬称の後は、姓(Last name)だけにするか、名(First Name)+ 姓(Last name)のフルネームのいずれかです。 親しいからと言ってMr.Johnsonのように名前(First Name)だけ書くのはNGです。

記載例:Mr.Wang またはMr. Johnson Wang。(×NG—Mr.Johnson)

担当者名が分からない時
担当者の名前が分からない場合は、所属部署をできるだけ細かく記述し、To whom it may concern (関係各位)と書きます。

➃お問い合わせ番号(EMS Item No.)

EMSラベル(送り状)に印字してあるEMSのお問い合わせ番号(EMS item number)を記入します。

➄送達手段(Shipped Per)

利用する運送サービスであるEMSと記載します。

➅支払い条件(Terms of Payment)

受取人(荷受人)との代金決済条件を記入します。お金を取らずに商品見本を送る場合は、無償(No Commercial Value)商品見本の2か所をマークします。荷受人からお金をもらう場合は、有償(Commercial Value)をマークします。

➆内容品の記載(Description)など

内容品は、Mechanical Parts、Electrical Goods、Toolsなど曖昧な表現は避け,具体的な物品名称を記入します。適当に書いていると税関審査で引っかかり最悪は貨物が税関で止められてしまう場合があります。

価格については、たとえ無償品であったとしても0円はNGです。販売したら幾らになるのかモノの価値を記入します。

➇郵便物の箱数(Number of Box)など

郵便物の箱数、梱包後の総重量、内容物の原産国(製造国)を記入します。

⑨署名(Signature)

日本語または英語のどちらかで署名します。署名画像を貼り付けてもOKです。

以上