①ノーコマで発送しろって言われたけど、どういう意味?

海外向けに無償品を発送するとき、出荷インボイスにノーコマと記載するように指示を受けることがあります。

ノーコマ???何かのコマーシャル?

いえいえ、ノーコマとは、NO COMMERCIAL VALUE(商業価値がないもの)の略です。

ノーコマで発送とは、出荷書類であるインボイスに、NO COMMERCIAL VALUEと記載して下さいという意味です。

書き方ですが、丁寧にNO COMMERCIAL VALUE FOR CUSTOMS PURPOSES ONLYと記述しても良いですが、頭文字をとってN.C.Vとする人もいます。

▲目次に戻る

 

②無償品だからインボイス価格は、0円と書いても良いの?

無償品とは、相手先から輸出代金をもらなわい品物という意味です。

代表的なのは、市場調査や評価用のサンプル、不具合を起こした商品の代替品、個人への譲渡品などです。

無償(タダ)で相手に渡すのだから、出荷書類であるインボイス(INVOICE)に、ゼロ円(JPY0.-)と記載しても良いのではと思いますが、通関書類としては間違いです。

実は、日本に限らず、ほとんどの国の税関では、物の価値に対して関税を賦課します。

しかし、販売価格が0円だからといって、物の価値も0円ではありません。

例として、故障した電子部品で考えてみます。

使用できない電子部品は、売り物になりません。よって、市場価値としては、ゼロです。

しかし、その電子部品の中に含まれている銀や銅が含まれていれば材料として、何らかの価値があります。
また、真空管など今は製造されてない電子部品などは、骨董品として価値があるかもしれません。

物である以上、例え、屑品であっても、何らかの価値があるのです。

インボイスにゼロ円(0円)と記載されていると税関で止められてしまいますので注意しましょう。

▲目次に戻る

 

③無償品の価格は適当に決めて良いの?

ときどき『ノーコマだから、インボイスに記入する製品価格は、適当に安い価格で書けばよい。』と思っている人がいます。

しかし、明らかに価値がある製品を故意に低い価格で申告するのは、有償品であろうが、無償品であろうが違法です。

昔から無償品は、適当に安い金額を書いて送っているが何も問題なかったという人がいるかもしれませんが、
それは、たまたま運良く税関を通っただけです。

税関審査であまりに低い金額の場合は、その算定の根拠を求められる場合があります。

もし、無償品の本当の価値が分からなければ、過去の販売実績や、同種類、同類製品の市場販売価格、原材料費に利潤を加えて記載します。

ちなみに日本では、取引金額が分からない製品の価格設定方法が、関税定率法の第四条の二、第四条の三の第1項、第2項に明記されています。
本記事の一番最後に、平成三十年三月三十一日公布(平成三十年法律第八号)改正された法律原文を記載していますが、法律文章が苦手な方は、税関サイトの【課税価格の計算方法】を見る事をお勧めします。

▲目次に戻る

 

④なぜインボイスにNO COMMERCIAL VALUEと記載するの?

最後に、答えられそうで意外と難しい質問です。

そもそも、なぜ無償品を送るときインボイスにNO COMMERCIAL VALUEと記載するのでしょうか?

『税関が必要としている。』
NO 『COMMERCIAL VALUEにしたら関税が優遇または免税になる。』
と答えた人は間違いです。

税関は関税を決めるとき、インボイスにNO COMMERCIAL VALUEの文字があるか否かを見ません。

繰り返しになりますが、関税は、物の価値に対して賦課されます。
有償だろうが無償だろうが関係ないのです。

では、何故、NO COMMERCIAL VALUEと書くようになったのでしょうか?

考えらる理由としては、3つあります。

・貨物の受取人に対して、この商品は無償で送ったので送金が不要であることを明示するため

・万が一、税関で事後調査があったときに、契約が紐づけされてない無償品と分かってもらうため

・海外の一部の税関で無償品のの関税が免税となったり優遇されるため

今後、無償品を送る場合に、是非参考として下さい。

▲目次に戻る

関税定率法の第四条の二、第四条の三の第1項、第2項
第四条の二(課税価格の決定の原則)
前条第一項の規定により輸入貨物の課税価格を計算することができない場合又は同条第二項本文の規定の適用がある場合において、当該輸入貨物と同種又は類似の貨物(当該輸入貨物の本邦への輸出の日又はこれに近接する日に本邦へ輸出されたもので、当該輸入貨物の生産国で生産されたものに限る。以下この条において「同種又は類似の貨物」という。)に係る取引価格(前条第一項の規定により課税価格とされたものに限る。以下この条において同じ。)があるときは、当該輸入貨物の課税価格は、当該同種又は類似の貨物に係る取引価格(これらの取引価格の双方があるときは、同種の貨物に係る取引価格)とする。
この場合において、同種又は類似の貨物に係る取引価格は、当該輸入貨物の取引段階と同一の取引段階及び当該輸入貨物の取引数量と実質的に同一の取引数量により輸入取引がされた同種又は類似の貨物(以下この条において「同一の取引段階及び同一の取引数量による同種又は類似の貨物」という。)に係る取引価格とし、当該輸入貨物と当該同一の取引段階及び同一の取引数量による同種又は類似の貨物との間に運送距離又は運送形態が異なることにより輸入港までの運賃等に相当の差異があるときは、その差異により生じた価格差につき、政令で定めるところにより、必要な調整を行つた後の取引価格とする。
2 前項に規定する同一の取引段階及び同一の取引数量による同種又は類似の貨物に係る取引価格がない場合には、同項に規定する同種又は類似の貨物に係る取引価格は、取引段階又は取引数量の差異及び輸入港までの運賃等の差異による当該輸入貨物と当該同種又は類似の貨物との間の価格差につき、政令で定めるところにより、必要な調整を行つた後の同種又は類似の貨物に係る取引価格とする。
第四条の三(国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定)前二条の規定により輸入貨物の課税価格を計算することができない場合において、当該輸入貨物の国内販売価格(関税法第七十三条第一項(輸入の許可前における貨物の引取り)の規定により税関長の承認を受けて引き取られた当該輸入貨物の国内販売価格を含む。以下この項において同じ。)又は当該輸入貨物と同種若しくは類似の貨物(当該輸入貨物の生産国で生産されたものに限る。以下この項において同じ。)に係る国内販売価格があるときは、当該輸入貨物の課税価格は、次の各号に掲げる国内販売価格の区分に応じ、当該各号に定める価格とする。ただし、第二号の規定の適用については、第一号の規定を適用することができない場合で、かつ、当該輸入貨物を輸入しようとする者が第二号の規定の適用を希望する旨を税関長に申し出た場合に限るものとする。
1.その輸入申告の時(関税法第四条第一項各号(課税物件の確定の時期)に掲げる貨物にあつては、当該各号に定める時。以下この号及び次号において「課税物件確定の時」という。)における性質及び形状により、当該輸入貨物の課税物件確定の時の属する日又はこれに近接する期間内に国内における売手と特殊関係のない買手に対し国内において販売された当該輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物に係る国内販売価格 当該国内販売価格から次に掲げる手数料等の額を控除して得られる価格
イ 当該輸入貨物と同類の貨物(同一の産業部門において生産された当該輸入貨物と同一の範疇ちゆうに属する貨物をいう。次項において同じ。)で輸入されたものの国内における販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費(ロに掲げる費用を除く。)
ロ 当該国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物に係る輸入港到着後国内において販売するまでの運送に要する通常の運賃、保険料その他当該運送に関連する費用
ハ 当該国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物に係る本邦において課された関税その他の公課
二 課税物件確定の時の属する日後加工の上、国内における売手と特殊関係のない買手に対し国内において販売された当該輸入貨物の国内販売価格 当該国内販売価格から当該加工により付加された価額及び前号イからハまでに掲げる手数料等の額を控除して得られる価格
2.前項の規定により当該輸入貨物の課税価格を計算することができない場合において、当該輸入貨物の製造原価を確認することができるとき(当該輸入貨物を輸入しようとする者と当該輸入貨物の生産者との間の当該輸入貨物に係る取引に基づき当該輸入貨物が本邦に到着することとなる場合に限る。次項において同じ。)は、当該輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の製造原価に当該輸入貨物の生産国で生産された当該輸入貨物と同類の貨物の本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費並びに当該輸入貨物の輸入港までの運賃等の額を加えた価格とする。
3.当該輸入貨物の製造原価を確認することができる場合において、当該輸入貨物を輸入しようとする者が希望する旨を税関長に申し出たときは、第一項の規定に先立つて前項の規定により当該輸入貨物の課税価格を計算するものとする。
(特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定)
※e-Govのサイトより抜粋

▲目次に戻る