見えない時代の流れをつかんでいた台湾企業、フォックスコン(鴻海)

日本製のノートパソコン、液晶テレビ、カメラが飛ぶように売れていた2000年前半。私は、精密機器、装置の海外営業として、毎月のように台湾出張していた。
そんなある日、現地のビジネスパートナーが、新しく購入した台湾製のノートパソコンを見せながら嬉しそうにこう言いました。

『このノートパソコンは、CPUは最新でメモリーやバッテリーも十分。それなのに価格は、日本製の半分くらいだよ!』

どうして、そんなに安くできるのか尋ねると、
パソコン組み立てを専門に行っている企業があり、中国の安い工員を大量に雇って人海戦術でパソコン製造をしているとのこと。
その企業は、自社ブランドを持たずに、欧米および日本の大手電機メーカーから幅広く注文をもらう戦略なので工場の稼働率が非常に高く価格競争力があるという。

正直当時の私は、
日本にもある電子機器受託製造サービス(EMS)業者が、巨大化したような企業が中国に生まれ、下請け業者として欧米や日本メーカーの厳しい仕様と値下げ要求に悪戦苦闘しているんだろうなーくらいにしか思わなかった。

一緒に出張に行っていた日本のお客様と
『日本企業の製造ラインは、既にオートメーション(AUTOMATION)の時代に入っているが、その企業は人海戦術だから、おとめーしょん―(乙女しょん)だね~』と冗談を言って笑ったのを今でも覚えている。

それから数年後、この中国の下請け会社は、世界的なヒットとなったアップル社のiPhone製造を請負ったことで大成功を収める。
そう昨年シャープを買収した、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だ。

最近のニュースでは、東芝買収にも興味を持っているそうだが、あの当時の日本人の多くが、こんな時代が来るとは思っていなかった。
中国がどんなに安く製品を作ろうとも所詮は物真似の域であり、長い年月をかけて蓄積した日本の高度な技術力がある限り、日本メーカーは世界のトップであり続けると思っていた。

しかし、現実はそうではなかった。
今思えば、台湾企業の鴻海は、日本企業があまく考えていた大きな時代の変化に気付いており、早くから果敢に動いていたのだと思う。

日本にいる我々が全く知らない間に、中国人はどんどん独自の経済圏を広げている。
対抗意識を持つ日本人も増えているが、時代の流れには逆らえない。

これからの日本人は、好きだろが嫌いだろいが中国人と上手に付き合いながら、得意な技術力で勝負する必要があるのだと思う。