中国・香港・マカオ・台湾など中国語圏に旅行にいくと、日本では使わない漢字を多く見つけます。漢字は、もともと中国から伝わって来たはずなのに何故違うの?と違和感を持たれる方もいると思います。

実は、中国語圏で使われている漢字は、繁体字(はんたいじ)と簡体字(かんたいじ)の2種類があり、どちらも日本語の漢字と若干ことなっています。繁体字・簡体字それぞれの歴史、発展の経緯、そして日本語との関係について詳しく見ていきましょう。

1. 繁体字と簡体字とは?

繁体字(はんたいじ)について

繁体字は、英語でTraditional Chinese(伝統的な中国語)と呼ばれており、古代中国から使用され続けている伝統的な漢字です。これらの文字は複雑で画数が多く、歴史文献や伝統文化などの文字で使用されています。繁体字は、香港・マカオ・台湾などで今も一般的に使用されています。

簡体字(かんたいじ)について

簡体字は、英語でSimplified Chinese(簡略化された中国語)と呼びます。その名のとおり、簡素化された漢字であり、伝統的な繁体字の画数を減らし、より簡単な形状にした漢字です。中国本土で使われています。

2. 簡体字の作成と普及の歴史

簡体字は、もともとは、民間人の間で素早く簡単に書くために使われていた書体でした。簡体字が合法的な地位を得たのは、1851年~1964年の太平天国からであり、書籍等で使われるようになりました。

現在使われている簡体字の書体は、1950年代初頭に中華人民共和国政府によって作成されました。読み書きを簡単にし国民への教育を普及させるため、多数の言語学者や文化人の協力のもと、1956年と1964年にかけて簡体字リストが制定され、公式に使用することが推奨されました。これにより、繁体字から簡体字への移行が加速し、中国本土での使用が定着しました。

3. 繁体字と簡体字の違い

繁体字と簡体字の違いは、その文字の形状と構造にあります。たとえば、「龍(ドラゴン)」という漢字は繁体字で「龍」と書かれますが、簡体字では「龙」となります。このように、簡体字では画数が減らされ、よりシンプルな形に変更されています。

4. 日本語との違い

日本語における漢字は、主に中国の漢字から導入されましたが、独自の進化を遂げています。日本では、繁体字に近い形の漢字が多く使用されていますが、戦後の国字改革により一部の漢字が簡略化されました。これらは「新字体」と呼ばれ、中国の簡体字とは異なる簡略化が行われました。

例えば、日本語の「国」という漢字は、繁体字の「國」を簡略化したものです。また、同じく「体」という漢字は、繁体字の「體」を簡略化しています。このように、日本語の簡略化は中国の簡体字とは異なるアプローチが取られており、同じ漢字でも形状が異なることがあります。

5. 結論

繁体字と簡体字は、中国語の文字体系における二つの主要な形式であり、それぞれが異なる地域で使用されています。また、日本語の漢字はこれらに影響を受けつつも、独自の発展を遂げています。歴史的背景や文化的な違いを理解することで、これらの文字がどのように現代の言語文化に影響を与えているのかを深く知ることができます。

この記事が、繁体字と簡体字の理解を深める一助となれば幸いです。