輸出ビジネスで大事な輸送保険について
自社の製品を海外に輸出するに時に必ず考えておくべきなのが輸送保険です。保険会社では外航貨物海上保険(がいこうかもつ・かいじょうほけん)と呼びます。
この外航貨物海上保険は、船による海上輸送または飛行機による航空輸送時の貨物の損害を当事者に変わって保険会社が補償するものです。
この保険に入ってないと、万が一、貨物が事故などで損傷した場合、損失額の負担割合を取引契約を結んだ当事者同士で協議する必要があります。しかしながら実際のビジネスでは、契約書または注文書上で、売手と買手の貨物輸送の危険負担責任(貿易条件といいます)を明確にしており、協議は行わず取り決めた貿易条件に従って売手または買手のどちらか一方が損害額を全額引き受けることになります。
輸出ビジネスの契約書または注文書でよく使われる貿易条件として、FCA/エフシーエーがあります。FCAとは、Free Carrier の略で買主指定の運送人に、予め取り決めた日本国内の指定場所で貨物を引渡せば危険負担が売主から買主に移ります。万が一の事があった時のリスク回避のために、買主側が外航貨物海上保険を付保します。FCAと同じ買主側に責任がおよぶ貿易条件としては、EXW/イーエックスワークス(工場渡し)、FASエフエーエス(船側渡し)、FOB/エフオービー(本船渡し)などがあります。
一方、輸出者である売主が、海上や航空輸送中の危険負担を負う貿易条件としては、CIP/シーアイピー(輸送費保険料込)、CIF/シーアイエフ(運賃保険料込)、DDP(関税込み持込渡)等々があります。この貿易条件で契約または注文を受けた場合、売主は保険会社に連絡して外航貨物海上保険を付保し、万が一のリスクに備える必要があります。
外航貨物海上保険を付保するにあたって、知っておくと良いことが3つあります
1.保険約款はどこの保険会社でも基本同じです
外航貨物海上保険は、その役割上、国際的に流通性がある共通書式を使う必要があり、日本の保険会社は、通常英国のロンドン保険業者協会( Institute of London Underwriters )が制定した協会貨物約款( Institute Cargo Clauses※略してICC と呼ぶ)を使用します。
2.保険期間(Duration of Risk、Period Insured)は有限です
外航貨物海上保険は、倉庫間条約(Warehouse to Warehouse)により売主の倉庫から買主の倉庫までの事故を補償するものです。しかしながら、買主の倉庫に到着するまで永久的に保険支払に応じるわけではありません。海上輸送であれば、通常は最終荷卸港において荷卸しを完了した後60日を経過する時、航空貨物の場合は、航空機から荷卸し後30日を経過すると保険は終了します。
3.ALL RISKの保険に入っていても、カバーされない危険範囲があります
外航貨物海上保険でカバーされる危険範囲が一番広い、ALL RISKの保険(※ICC(A)とも言います)を付保すればすべてのリスクが補償されるわけではありません。戦争・革命・ストライキ・暴動などによる、貨物の損害は、この保険ではカバーされない為、War Clauses や S.R.C.C Clausesなどの特約保険に加入する必要があります。