輸入取引で海外メーカーから送られる見積について

海外調達で海外メーカーに価格問合せをすると、FOB CHINA JPY xxx, xxxx といった見積が送られてくる事があります。FOBとは、Free On Boardの略であり本船渡しの事で、皆さんもご存知の通りインコタームズ(INCOTERMS)と呼ばれる国際商業会議所(ICC)が定めている国際貿易条件の一つです。

FOB CHINAと書いてあれば、中国国内の輸送と輸出通関までは、売り手の中国メーカー面倒を見てくれるが、海外輸送と保険費・輸入関税は、買い手である日本側が負担しないといけないことは理解できます。
その一方で、広い中国のどこの港まで持って行ってくれるのか? FOBは海上輸送で用いる条件だが、飛行機で輸送する場合は、どこまで費用およびリスクを負担してくれるのか?など疑問は残ります。

しかし、実際のビジネスでは、信頼関係が出来てない新しい取引相手に対しいきなり貿易規則の話しをしたら煙たがられます。まずは、商売にとって最も重要な仕様、納期、品質保証などを詰めて、条件が纏まって、契約書を作るときに正し貿易規則を記載すれば十分です。

では、いよいよ契約書の段階まで来たとして、正しい貿易規則ってどうやって書けば良いのでしょうか? そして、もしこのままFOB CHINAで契約したら、どんなリスクがあるのでしょうか?

中国からの輸入ビジネスで中国企業とFOB CHINAで契約した場合の3つのリスク

1. 売り手が 海上輸送費が高い港を指定する可能性がある

FOB CHINAと書いてあれば、買い手も売り手も中国の好きな港を指定できます当然、両者は、できるだけ自社に都合の良い港を望みます。FOB CHINAでは、海上輸送費および海上保険は全て買い手である日本側が負担しなければいけません。当然、海上輸送が高くなる港を指定されると困る分けで、契約後に交渉が必要となります。

2.船積時の事故責任が曖昧になる

荷物の輸送で事故発生率が高いのが船積時です。この船積時の事故責任において、現在使われているインコタームズ2010では、荷物が本船の上に置かれた時に事故責任が売主から買主に移るとされてます。
しかし、古い貿易規則であるインコタームズ2000のFOB解釈では、荷物が船の手すりを通過した時となっており、事故責任が売主に移るのが時間的に少し早くなります。もし、FOB CHINAとしか契約書に書いてない場合、売主である中国側が、古いインコタームズ2000の解釈を持ち出して、荷物は船の手すりを超えていたといって責任回避をすることも不可能ではありません。

3.輸出通関費用を請求される場合がある

貿易規則はインコタームズだけが定めているのではありません。アメリカには、1941年改正米国貿易定義(Revised American Foreign Trade Definitions, 1941)と呼ばれる古い貿易定義があり、そこではFOBの解釈も異なります。インコタームズで定義されているFOBは、輸出通関費は売主が負担になります。しかし、米国貿易定義では、輸出通関費用は買主負担が原則なのです。
さすがに、何十年も昔に制定された米国貿易定義を持ち出して、輸出通関費用を請求してくるような、悪質なお客に出会ったことはありませんが、FOBといっても、いろいろな解釈があるという事は知っておくべきです。
このような事態に陥らない為に、インコタームズ (INCOTERMS)を定めている国際商業会議所(ICC)は、契約を取り決める時は、以下の通り細かく記載することを勧めてます。

例:
悪い例:FCA CHINA
良い例:FCA 123 Haiden-lu, Beijing, China Incotrems 2010

是非参考にして下さい。