10人中8人がスマートフォンを使っている日本では、2018年の一年で国民人口の4分の1に相当する3180万台のスマートフォンが出荷されました。
この話だけ聞くと日本のスマートフォン市場が大きく思えます。
しかし同じ2018年の世界全体のスマホ出荷台数は、14億5600万台もあり、世界スマートフォン市場の中で日本市場が占める割合は、たったの2.2%しかありません。
最近、中国のHuawei/華為(以下ファーウェイ)製スマートフォンは、米国の取引規制などな影響で日本での販売が難しくなっています。しかし、当事者のファーウェイからすると、日本市場で売れなくても平気なのかもしれません。
スマートフォンの市場調査で有名なIDC、MM総研、Canalys、Counterpoint、Statistaの情報をもとに世界のスマートフォン出荷数量とメーカーシェアを分析してみました。
世界スマートフォン市場
各市場調査企業の報告によると2018年の全世界スマートフォン出荷台数は、前年度比▲3%減の14.56億台になった模様です。
地域別にみると最大市場である中国の下落がもっとも大きく2017年の4.59億台から▲14%減の3.96億台になりました。ちなみに中国は、2年連続の減少になります。
日本やEMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)は、世界平均とほぼ同じ▲2%減です。
世界市場が低迷する中、インドだけが好調であり前年度比約10%増の1億4520万台になりました。
地域別メーカーシェア
1.世界市場
世界全体では、韓国Samsung(以下サムスン)の出荷台数が3億台の大台を超え、シェア20.3%を獲得しトップになりました。
ちなみにサムスン一社で日本市場の10倍近い台数を出荷している事になります。
また、米国から制裁を受けているファーウェイが2位であることも興味深いことです。
米国と日本でトップシェアの米Apple(以下アップル)の出荷台数は、世界市場ではサムスンやファーウェイに及びませんでした。
世界出荷台数の約50%をサムスンと中国御三家ファーウェイ、Xiaomi(以下シャオミ)、Oppo(以下オッポ)が占めており、コストパフォーマンスが高いスマートフォンが人気です。
2.日本市場
アップルのiPhone (アイフォーン)が引き続きトップシェアを維持しました。しかし、アップルの市場シェアは年々低下しており2016年の54.1%から34.6%下落しました。
日本市場の特徴は、日系メーカーであるシャープ・ソニー・京セラがトップ5に入っていることです。これは日本だけの現象であり、海外では日系ブランドはランク外です。日本の市場は、ガラケーから始まりスマートフォン時代になっても依然としてガラパゴス状態と言えます。
ちなみにSIMフリーのスマートフォンに限定して見るとトップシェアは、ファーウェイ(31.5%)、2位が台湾Asus(アスース)という結果でした。今後拡大が見込まれるSIMフリー市場の動向が気になります。
3.中国市場
中国は戦国時代です。トップを行くファーウェイは、前年度比7%増で大きくシェアを伸ばしましたが2位のVivo(ビボ)や3位のオッポも人気があります。中国メーカー以外としては5位にアップルが入っています。
なおアップルの市場シェアは昨年と同じ9%ですが、出荷数量でみると▲13%の大幅減になっています。
4.EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)市場
1位がサムスン、2位がファーウェイ、3位がアップルです。ブランドより実用性が高いスマートフォンが売れています。
注目すべきは4位につけているTranssion(以下トランション)という中国メーカーです。
トランションは、日本ではほとんど耳にしませんが丈夫で安いことからアフリカ地域で大人気です。
5.米国(アメリカ)市場
やはり自国のアップルがトップです。米国市場で面白いのは韓国メーカーのサムスンとLGがそれぞれ2位と3位を占めていることです。
安全保障上の脅威として締め出された中国のファーウェイやZTEの代わりに米国Motorola(モトローラ)がシェアを増やしていることも注目すべきところです。
自動車業界では有名な日系メーカーですが、スマートフォン市場では存在感がありません。
6.インド市場
世界のスマートフォン市場が低迷する中、インド市場だけは需要が増加しています。
市場研究会社Counetpotの最新のデータによると、2018年インド全体のスマートフォンの出荷量は約1.452億台で前年比10%増加しました。
ローカルメーカーであるMicromax(マイクロマックス)がシェア4位にランクインしており今後の動向が気になります。
新興スマホメーカー情報
Huawei(ファーウエイ・華為技術)
1987年に小型の電話交換機や火災報知器などの製造のため設立された中国メーカー。スマートフォンの出荷台数では世界第2位(トップは、サムスン)。本社は深セン。CEOの任正非(Rén Zhèngfēi)は人民解放軍の出身であり2018年フォーブス誌の中国富豪リスト83位。2018年12月1日カナダで逮捕されたCFO孟晩舟(Mèng Wǎnzhōu)は任正非の娘。※離婚した妻の姓である孟を名乗っている。
Xiaomi(シャオミ・小米科技)
2010年に設立した中国のスマートフォンメーカー。本社は北京市海淀区。アップルのiPhoneと同等仕様の製品を安く製造し中国版iPhoneとして大人気となった。CEOの雷軍(Léi Jūn)はアップルのスティーブ・ジョブスの経営手法を参考にしており中国のジョブスとも呼ばれている。
Oppo(オッポ・欧珀)
2003年に設立。語学学習機、教育用機器、電子辞書の大手メーカー歩歩高のAV部門が立ち上げたスマートフォンメーカー。本社は広東省東莞市。世界のスマートフォン市場では有名である。2018年1月に日本市場にAndroidスマートフォン「R11s」を投入した。
Vivo(ビボ・维沃)
2009年に設立。OPPOと同様に歩歩高電子の通信機器部門が立ち上げたスマートフォンメーカー。本社は広東省東莞市。中国市場ではファーウェイ、サムスンに次ぐ第3位の出荷台数を有するメーカーである。
Transsion(トランション)
2013年に設立した中国のスマートフォンメーカー。本社は中国深セン。中国語で伝音と呼ばれてお、頑丈なデザインと割安な価格で、アフリカ地域でダントツの人気がある。1億9000万人というアフリカ最大の人口を有するナイジェリアでは、シェア38.71%もあり、サムスンやNokia(ノキア)を大きく引き離してトップである。
TCL(ティシーエル)
1982年設立の中国の総合家電メーカー。本社は広東省恵州。カラーテレビ事業で成功し有名になった。2014年には、三洋電機のメキシコの液晶テレビ工場を買収。米国で一世を風靡した携帯電話メーカーBlackBerry(ブラックベリー)の製造権の長期ライセンスを持っている。
Micromax(マイクロマックス)
1999年に設立されたインドの電機メーカー。もともとはソフトウエア会社であったがスマートフォン市場に参入しインド系スマートフォンメーカーのトップ企業となった。