原産地を偽った表示がある貨物は、輸入できるか?
これに関しては、関税法第71条(原産地を偽った表示等がされている貨物の輸入)に以下の様に明記されており輸入は出来ません。
関税法第71条『原産地について直接若しくは間接に偽った表示又は誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可しない。』
偽った表示の例としては、中国で作ったワインをメイド・イン・フランスと製品に表示している場合などです。
また、誤認を生じさせる表示とは、偽りではないが読む人によっては勘違いするような表示の事です。
例として、大分県内に宇佐(”うさ”と読む)という地名がありますが、そこの特産品にMade in USAと付けて販売していたら、米国から抗議が来たとの話があります。
勿論、宇佐の人達からすると昔からの土地の名前を英語で書いただけで悪気はないのですが、通関業務上は、誤認を生じさせる表示に該当すると判断される可能性が高いです。米国の関税法がどうなのか不明ですが、日本では、このような表示の製品は輸入できません。
大分県宇佐(うさ)産 ⇒ 英語で書けば、MADE IN USA ???
表示の問題により通関で止まってしまった製品は、すぐ没収されるのか?
原産地の偽造や誤認を承知の上で輸入する事は、当然やってはいけない事です。しかし、上述の宇佐市(USA)のように、知らない内に製品に他国の名前を連想させる表示が入る事もあるかもしれません。
日本の税関は、原産地について偽った表示または、誤解を生じさせる表示がある貨物を税関が見つけても、いきなり没収という事はしません。
原産地表示に問題がある貨物を見つけた場合は、まず税関長から輸入者に通知があります。
通知を受けた輸入者は、税関長が指定した期間内に、問題となっている表示を消すか訂正すれば、輸入は許可されます。
勿論、輸入を諦めてその貨物を輸出国に戻すという選択技もあります。
もし、税関長が指定した期間内に対応をしない場合は、関税法第87条1項により、税関長が留置(りゅうち)します。ここでいう留置とは、貨物を税関の支配のもとにとどめておくこという事です。そして、留置された日から4ヶ月を経過してもなお、留置されている時は、公売または随意契約により売却を行うことができるとあります。(関税法88条で準用する同法84条)
原産地表示がない製品は、輸入許可してもらえるのか?
繰り返しになりますが、原産地を偽ったり誤解を生じさせる表示の貨物は輸入できません。しかし、原産地の表示がない貨物を輸入許可をしないという規定や法律はありません。輸入申告書類に問題がなければ輸入許可されます。
また、面白い事に原産地以外の国の著名な風景等が表示されている製品は、原産地を誤解させる表示にあたらないとされております(関税法基本通達71-3-4)。つまり、ワインを例にすると中国産ワインのラベルに凱旋門やエッフェル塔などの風景をいれていても輸入許可されるということです。
関税法(原産地を偽った表示等がされている貨物の輸入)
第七十一条
1 原産地について直接若しくは間接に偽つた表示又は誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可しない。
2 税関長は、前項の外国貨物については、その原産地について偽つた表示又は誤認を生じさせる表示がある旨を輸入申告をした者に、直ちに通知し、期間を指定して、その者の選択により、その表示を消させ、若しくは訂正させ、又は当該貨物を積みもどさせなければならない。(収容貨物の公売又は売却等)
第八十四条
1 収容された貨物が最初に収容された日から四月を経過してなお収容されているときは、税関長は、政令で定めるところにより、公告した後当該貨物を公売に付することができる。この場合において、公売に付される貨物について次項の規定による期間の短縮があるときは、第八十条第三項後段(貨物の収容)の規定を準用する。
2 収容された貨物が生活力を有する動植物であるとき、腐敗し、若しくは変質したとき、腐敗若しくは変質の虞があるとき、又は他の外国貨物を害する虞があるときは、前項の期間は、短縮することができる。
3 税関長は、収容された貨物が公売に付することができないものであるとき、又は公売に付された場合において買受人がないときは、政令で定めるところにより、これを随意契約により売却することができる。
4 第1項若しくは第2項又は前項の規定により第七十一条第一項(原産地を偽つた表示等がされている貨物)の貨物を公売に付し、又は随意契約により売却する場合においては、税関は、原産地について偽つた表示又は誤認を生じさせる表示を消さなければならない。
5 税関長は、収容された貨物のうち人の生命若しくは財産を害する急迫した危険を生ずる虞があるもの又は腐敗、変質その他やむを得ない理由により著しく価値が減少したもので買受人がないものを廃棄することができる。
6 第八十一条第二項(収容と仮差押又は仮処分)の規定は、第一項若しくは第二項又は第三項の規定による公売又は随意契約による売却について準用する。(原産地を偽つた表示等がされている貨物の留置)
第八十七条
1 税関長は、第七十一条第一項(原産地を偽つた表示等がされている貨物)の貨物について当該貨物の輸入申告をした者が同条第二項の規定により指定された期間内に原産地について偽つた表示又は誤認を生じさせる表示を消し、若しくは訂正し、又は当該貨物を積みもどさないときは、これを留置する。
2 前項の規定により留置された貨物は、政令で定めるところにより、原産地について偽つた表示又は誤認を生じさせる表示が消され、若しくは訂正され、又は当該貨物が積みもどされると認められる場合に限り返還する。
3 前条第二項の規定は、前項の返還について準用する。関税法基本通達
(誤認を生じさせる表示に該当しない表示)
71―3―4 次のいずれかに該当する表示は原則として、「誤認を生じさせる表示」に該当しないものとして取り扱う。
(1) 貨物の原産地以外の国名等の表示が、貨物の流行、型又は品質、性能等を表現するような字句と併記されている場合で、当該字句が明確に表示されているとき(例えば、貨物の原産地以外の国名等が「Fashion in ○○」、「Mode
in○○」、「○○Style」、「○○Patent NO…」のように表示されている場合)。
(2) 貨物の原産地以外の国の著名な風景等が表示されている場合。
(3) 貨物の原産地以外の国の文字を使用した説明文又は広告文等が表示されている場合。
(4) 「工業標準化法(昭和 28 年法律第 185 号)」に基づく日本工業規格に該当するものであることを示す特別の表示(「JIS」マーク)、「農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和 25 年法律第 175 号)」に基づく日本農林規格の格付けの表示(「JAS」マーク)、「家庭用品品質表示法(昭和37 年法律第 104 号)」に基づく家庭用品の品質に関する表示、あるいは、業界の自主規制に基づく品質、規格等に関する表示(例えば、日本玩具協会の玩具安全マーク(「ST」マーク))が表示されている場合。ただし、前記 71―3―3(1)ロ(ロ)に該当する場合はこの限りではない(例えば、家庭用品品質表示法に基づく表示者(本邦法人名)が表示されている場合。)