製品輸入時に支払う関税について

貿易とは異国間との売買取引のことを意味します。輸入の場合、直接または商社経由で海外から製品を購入する場合もあれば、海外のメーカーに材料を支給して加工した製品を輸入する場合もあります。

どのような貿易形態であれ、本邦(日本)に輸入する場合、輸入者は税関に輸入申告をして関税があれば納税する必要があります。

関税は、通常、課税価格に税率をかけて算出します。

課税価格は、輸入した製品の本邦(日本)でのCIF価格、保険料を払ってない場合はCFR価格です。通常は、購入した製品の運送料を含む現実支払価格をそのまま課税価格として申告します。しかし、材料を支給する委託加工貿易の場合は、加算要素として、無償提供した材料や副資材も課税価格に加算して申告する必要があり注意が必要です。

関税額=課税価格(現実支払価格+加算要素)× 税率

他社が支給した材料も課税価格に加算が必要なのか?

前段で、委託加工貿易においては、海外の加工業者に無償提供した材料や副資材も課税価格に加算して税関に申告する必要があると述べました。では、自社でなく、他社が無償で提供した材料(副資材)は、課税価格に加算する必要があるのでしょうか?

例として、服飾製品を中国で委託加工して輸入販売している輸入業者(A社)がいらっしゃるとします。販売先である国内のお客様(B社)から新デザインの服の注文を受けた輸入業者(A社)は、いつものように委託加工をする為、中国の業者に依頼しました。しかし、今回使う生地は、お客様(B社)が独自に開発したものであったので、話し合いの結果、お客様(B社)から直接、中国の業者に無償で納入して頂くことになりました。この場合、輸入業者(A社)は、輸入時の課税価格にお客様(B社)が無償提供した生地の実価格を加算して申告が必要でしょうか?

結論からいうと、必要です。お客様(B社)が無償提供した生地も加算要素になります。

他社の無償提供品も課税価格に加算が必要となる理由

関税定率法(課税価格の決定の原則)第四条によると、課税価格とは『輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格』とあります。つまり、日本の税関は、日本の港に届いた時の本当の製品価値に対して課税するということになります。

ここで注意が必要なのは『支払われるべき価格』という言葉です。何が、支払われるべき価格であるかについては、関税定率法の同条に個別に定義されておりますが、今回のケースにおいては、第三項の『当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務のうち次に掲げるものに要する費用』が該当します。
記載の通り、間接的に提供した場合も含まれているので、今回のケースのように、お客様(B社)からから無償提供された生地の価格も現実支払価格に加算して申告する必要があります。

輸入業者(A社)が取るべき3つの対応法

例で書いたケースにおいて服飾輸入業者(A社)が取るべき対応は、以下の3つになります。

1.お客様(B社)から、無償提供する製品の実価格(A社への販売価格)を教えてもらい加算申告する。

2.お客様(B社)に、無償提供でなく有償として中国の加工業者に出荷してもらう。

3.お客様(B社)から、生地を買取り、A社から無償で中国の加工業者も提供して加算申告する。

※加算費用の額は、その物品を買手が自己と特殊関係にない者から取得した場合には、その取得価格によることとされています。

さらに詳しく知りたい場合は、最寄り税関の首席関税評価官に確認をすることをお勧めします。
但し、正確な税額をする為には、予め契約内容が分かる資料を用意しておく必要があります。

用語説明:
委託加工貿易
海外の企業に原材料や部品等を提供し加工や組み立てしてもらい、その製品を輸入する貿易取引形態を委託加工貿易といいます。今回のように海外に加工原材料を提供し、その加工品を本邦へ輸入することを、逆委託加工貿易といいます。

参照:
関税定率法
(課税価格の決定の原則)
第四条 輸入貨物の課税標準となる価格(以下「課税価格」という。)は、次項本文の規定の適用がある場合を除き、当該輸入貨物に係る輸入取引(買手が本邦に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有しない者であるものを除く。以下同じ。)がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格(輸出国において輸出の際に軽減又は払戻しを受けるべき関税その他の公課を除くものとする。)に、その含まれていない限度において次に掲げる運賃等の額を加えた価格(以下「取引価格」という。)とする。

一 当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用(次条及び第四条の三第二項において「輸入港までの運賃等」という。)

二 当該輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料又は費用のうち次に掲げるもの
イ 仲介料その他の手数料(買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるものを除く。)
ロ 当該輸入貨物の容器(当該輸入貨物の通常の容器と同一の種類及び価値を有するものに限る。)の費用
ハ 当該輸入貨物の包装に要する費用

三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務のうち次に掲げるものに要する費用
イ 当該輸入貨物に組み込まれている材料、部分品又はこれらに類するもの
ロ 当該輸入貨物の生産のために使用された工具、鋳型又はこれらに類するもの
ハ 当該輸入貨物の生産の過程で消費された物品
ニ 技術、設計その他当該輸入貨物の生産に関する役務で政令で定めるもの

四 当該輸入貨物に係る特許権、意匠権、商標権その他これらに類するもの(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く。)で政令で定めるものの使用に伴う対価で、当該輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により直接又は間接に支払われるもの

五 買手による当該輸入貨物の処分又は使用による収益で直接又は間接に売手に帰属するものとされているもの