中国の地域における味の違い~南甜北咸、東辣西酸~

国内において西日本と東日本では、食文化が異なります。よく言われるのが『うどんのだし』です。西日本では、昆布だしに薄口醤油を加え透き通る色をしておりますが、東日本は、かつお節のだしに濃口醤油を加えた濃い色をしております。小さな島国の日本でも味付けに地域差があるくらいですから、面積で日本の約26倍もある中国の味付けは当然かなりの違いがあります。

多くの人が四川料理と聞けば、辛くて山椒の痺れをイメージすると思いますが、他の地域はどんな味をしているのでしょうか?

中国人に地域による味について聞くと、たいていは、『南甜北咸、東辣西酸』(ナンティエン、ベイシエン、ドンラー、シースワン)と答えます。

これは、中国を東西南北で分けた時の食文化の違いを表しており、地域環境と味付けの関係がよく分かります。

南甜北咸、東辣西酸の意味について

まず、南甜(ナンティエン)ですが、南部の人は、甘い味付けが好むという意味です。南部はどこを指すのかというと、一般的には、長江(揚子江)の南側つまり、蘇州、無錫、上海、镇江、南京、浙江、福建、广东、广西の地域になります。特に蘇州、無錫、上海の人たちは、甘い味付けが好きなことで有名であり、彼らにとって砂糖は料理に不可欠な調味料です。

次が、北咸(ベイシエン)ですが、咸とは塩っぱいという意味です。つまり、北部の味付けは、塩っ辛いという意味です。北部とは、南の逆つまり、長江(揚子江)の北側のことで、山東、河北、東北地方です。特に山東省一帯の料理は、魯菜(ルーツアイ)と呼ばれ、中国八大料理の一つとして有名です。

そして、東辣(ドンラー)は、読んで字の如し、東が辛いという意味です。四川料理は、東部に入ります。他には、湖南、湖北、江西、贵州などの地域が東部に含まれるそうですが、日本人の私からすると、なぜ内陸の四川地域を東部というのか不明です。また、北部東北地方の朝鮮族も辛い料理を好みます。東部地域の人達が、いかに辛い料理が好きかを言い表す時、中国人は以下のように言ったりします。

贵州人不怕辣、湖南人辣不怕,四川人怕不辣

意味:
貴州の人は、辛さを怖がらない。
湖南の人は、辛くすることを怖れない。
四川の人は、辛くないことを怖がる。

最後に、西酸(シースワン)ですが、これは陕西、青海、新疆(ウイグル)などの中国の西部をさします。この地域の人達は、酸、つまり酸っぱい味を好みます。西部は、黄土高原と呼ばれるカルシウムが多く含まる土壌が多く、必然的に食べ物に含まれるカルシウム料も多く、摂取したカルシウムが体内に蓄積され結石になりやすいと言われております。西部に住む人々は、長い経験の中で、酸性食品が結石を減らす効果があると気づき、それ以降、酢を多く料理に使うようになり、やがて酸っぱい料理が好きになったそうです。