アメリカやイギリスとの契約書や注文書でよく出てくる Entire Agreementとは
米国企業と取引をすると、注文書にPURCHASE TERMS ANS CONDITIONSという細かい英語で書かれた約款が入っている場合があります。よく見るとたいていEntire Agreementという単語が見つかります。
実際に先週、米国企業から送られてきた注文書にも小さな文字でびっしりと約款が書かれてあり、第一条のAcceptanceに以下の文章が入ってました。
海外企業と取引をする場合は、大手企業であれば社内の法務部に英文契約書を投げてしまえばそれで済みますが、小規模事業者の場合は、やはり担当者が辞書を引きながら内容を把握するしかありません。しかし、法律的な知識がない中で辞書を引いても契約書独特の意味までは理解できません、その一つが、このEntire Agreementです。
Entire Agreementの本当の意味について
ジーニアス英語辞典でENTIREを引くと【1.全体の、2.無傷の、3.完全な】と書かれており、そのまま訳すと、完全な契約書という意味になり、分かったような分からないような気持ちになります。
このEntire Agreementは、[完全合意条項]と呼ばれる法律用語で【この契約を持って完全合意とし、契約以前の口頭、議事録、E-mailなどの約束事は白紙とする】という大事な意味を持ってます。
イギリスの法律およびそれを受け継いで発展したアメリカの法律(英米法といいます)では、口頭証拠排除ルール “Parol Evidence Rule”と呼ばれる日本人にはなじみが薄いルールが存在しております。
このルールは、契約書という書面を作成する以上は、盛り込んでおく内容はすべてその契約書に書いておくべきであるという考え方です。このルールにより、英米法の下で契約を行った場合は、口頭で約束していた事だけでなく、交渉の途中でメールや議事録で書いていたことでも、契約書に書かなかったければ存在しなかったと見なされます。
Entire Agreementとは、この口頭証拠排除ルールを文章で説明したものです。(因みに英米法では、Entire Agreementの条約が無くとも契約書を取り交わせば原則口頭証拠排除ルールが適応されます)
日本の契約は、英米法と異なり大陸法と呼ばれるドイツ・フランスなど、ローマ法の影響を強く受けたヨーロッパ大陸諸国の法律に準拠しており、契約に明記されてない事は、否定されてないという考えであり。実際、国内で裁判になった時には、Eメールや議事録などで契約に定められてない取り決めがあることを主張すれば、裁判官に認められる場合がああります。
英米企業と準拠法を相手国にして契約書や注文書を交わす場合は、この口頭証拠排除ルール “Parol Evidence Rule”が適応されるので、重要な過去のやり取りを契約書上に盛り込んでおく必要があります。