輸出ビジネスにおける貿易条件D類型について
海外へ製品を輸出するとき、売主(輸出者)にとって負担が少ない貿易条件は以下の4つです。
- EXW (Ex Works,工場渡し条件)
- FCA (Free Carrier,輸送人渡し条件)
- FOB (Free On Board,本船渡し条件)
- FAS(Free Alongside Ship)
もしあなたが国際貿易に不慣れであれば、この4つの条件の中でもEXWで契約することが一番無難です。
だだし、実際の商談は相手があって初めて成立するものであり、こちらの要求が通るとは限りません。お客によっては、自社工場や会社まで荷物を運ばなければ契約に応じてくれない場合もあります。
売主が、お客の国(取引相手国)の指定場所まで運送手配をする貿易条件は3つあり、それぞれDAP、DPU、DDPと呼ばれています。この3条件は、頭文字がすべてDなのでD類型とも言われています。
DAP、DPU、DDP(インコタームズ2020年版)
DAP(Delivered At Place/仕向地持込渡し条件)
DPU(Delivered At Place Unloaded/荷降ろし込み持ち込み渡し)
DDP(Delivered Duty Paid/関税込み持ち込み渡し条件)
DAP・DPU・DDP契約で注意すべき2つのポイント
1.関税の負担について
相手国までの持ち込み渡し条件であるDAP・DPU・DDPで契約を締結するときに注意すべき第一のポイントは、買主(輸入者)の国で発生する関税を誰が負担するのか?ということです。
輸入地の通関業務および関税の支払いをすべて取引相手である買主(輸入者)に引き受けてもらいたいのであれば、DAP(Delivered At Place/仕向地持込渡し条件)またはDPU(Delivered At Place Unloaded/荷降ろし込み持ち込み渡し)で契約しなければいけません。
しかしながら、もし買主(輸入者)が関税の支払いを拒絶する場合は、DDP(Delivered Duty Paid/関税込み持ち込み渡し条件)での契約になります。
DDPは、売主(輸出者)の負担がもっとも重たい貿易条件です。
何も考えずにDDPで契約すると後から予想外の費用負担を強いられ、損失をこうむる場合もあります。相手国の関税率が良く分からない時は、DDPでの契約は絶対に避け、DAPまたはDPUで契約するべきです。
2.製品(貨物)の荷降ろし責任について
次に大事なのは、貨物の輸送リスクに対してどこまで責任を負うかです。
国際輸送でもっとも事故が発生しやすいのは、トラックなど運送機関に貨物を積込む時と荷降ろしする時です。
とくに精密機器などはちょっとした振動や衝撃だけで壊れてしまう場合があるので、運送中における責任範囲を十分に理解しておく必要があります。
DAP, DDPの場合
DAP(Delivered At Place/仕向け地持ち込み渡し条件)とDDP(Delivered Duty Paid/関税込み持ち込み渡し条件)で契約した場合は、売主は、輸入地(仕向地)の買主指定場所に届けるまでの運送リスクを負います。
たとえば、貨物の受け渡し場所を買主工場渡しとした場合、運送途中の仕向地ターミナルで貨物が破損したり紛失したときは、売主が責任を取らなければなりません。
ただし、買主指定場所での荷降ろし作業は、買主(輸入者)に責任があります。
つまり、指定場所でトラックから荷降ろしするとき貨物が転げ落ちて壊れても売主(輸出者)に責任はありません。
DPUの場合
DPU(Delivered At Place Unloaded/荷降ろし込み持ち込み渡し)の場合も、売主は輸入地(仕向地)の買主指定場所に届けるまでの運送リスクを負います。
前述のDAP,、DDPとの違いは、買主指定場所における荷降ろし責任を売主(輸出者)が負うということとです。
もし、仕向地でトラックなどから貨物を降ろす時に事故が発生した場合、売主(輸出者)は貨物の破損責任をとらなければならないことを十分に理解しておく必要があります。