海上保険制度はいつ誰が作ったのか?

海上保険は、14世紀のイタリアで出来たと言われてます。では、海上保険を考えた人は、どこの誰でしょうか?頭のいい学者さんが考えたのでしょうか?

海外保険の前身は、12~13世紀にイタリアを中心とした地中海交易で使われていた冒険貸借(ぼうけんたいしゃく/Bottomry)であると言われております。

冒険貸借と海上保険の違い

冒険貸借のしくみは、海上保険とは少し異なります。
現代の海上保険では、交易をしたいと思っている貿易業者が、保険会社に対し保険料を支払い、万が一貨物を失った場合には、保険会社より損失金額を補てんしてもらいます。

一方、冒険貸借では、物を仕入れて船を借り交易をしたいと思っている貿易業者が、お金持ちの資本家から貿易に必要な資金を借り受けます。もし航海が無事に遂行されれば、貿易業者は、借りていた元金に利息を上乗せして資本家に返済します。しかし、海難や海賊に遭って貨物が全損となった場合は、貿易業者は、資本家にお金を返済する必要はありません。

冒険貸借で資金を貸し出していた資本家は、保険会社というよりは、現代のベンチャーキャピタルに近い存在です。

ちなみに、航海が無事に遂行された時に資本家に支払われる利息は、1航海につき22%から33.3%と言われており超高金利でした。
この利率から地中海交易は、リスクが高いが、一度成功すれば、莫大な富みが手に入る商売であったことがうかがえます。

貿易貸借から海上保険への転化

冒険貸借は、12~13世紀には、イタリア以外にフランス、スペイン、ポルトガルでも盛んに行われておりました。
しかし、1230年頃、お金の貸し借りで高利を受取ることはキリスト教の教えである隣人愛に反するとの考えから、ローマ法皇グレゴリオ9世によって徴利禁止令(=利息禁止令)が発令され、冒険貸借は禁止されました。
しかし、交易をする以上は資金調達は必須であり法律違反にならない方法がいろいろと考え出され、14世紀に現在使われている海上保険の基本が完成しました。尚、当時の海上保険約款の完成度は非常に高く、今日国際貿易で使用されているロンドン保険業者協会( Institute of London Underwriters )の協会貨物約款( Institute Cargo Clauses※略してICC と呼びます)にも受け継がれております。

参考文献:木村栄一著【海上保険】(昭和53年千倉書房版)