天津浜海新区のGDPが突然3割減になった理由

新年まもない2018年1月11日、中国天津からとんでもないニュースが流れました。

中国国家級新区のリーダー的存在であった天津浜海新区が、同地区のGDP(域内総生産)の計算を見直し、水増し分を取り除いたところ、当初は2016年1兆元(約17兆日本円)であったGDPが3割減の6,654億元(約11兆5千億日本円)になったのです。

2017年においても7,000億元(約12兆1千億円)で前年度比でわずか6%増になるとの事。これは遼寧省、内モンゴルに続いて三番目に低い数値になります。

好調と思っていた天津浜海新区の経済が急落した原因とは?

もともと、天津市と新疆(ウイグル)のコルガス市は、中国のタックスヘイブン(低課税地域)として有名で、当該政府は税制優遇政策を通じて他省企業の登記を集めていました。

政府への免税手続きを請け負う専門業者までおり、税金の優遇を受けようとたくさんの企業が天津で会社を登記しました。しかし、実際の経営は天津以外の他都市で行う企業が多く、本当の意味で天津経済に貢献していませんでした。

今回、天津海浜新区GDPが3割以上も急落した原因は、登記だけで実際の経営が天津で行われてない企業を統計から除外したからです。

実は、天津浜海新区のGDP水増し問題は、昨年12月27日の天津日報の論評「挤干水分关键要“舍得” 」でも指摘されていました。その記事によると、これまでの水増しされた経済数値は、天津市政府のメンツにおいては地域のGDP値と都市の経済ランクを引き上げて良い事でした。しかし、裏側の実経済を見ると一般市民のふところは暖かくなってはいなく福祉厚生も改善されていません。このような実態とかけ離れた経済指標は、政府の経済情勢判断に悪い影響を及ぼす可能性があり、灰色サイ(※1)のようにおとなしくしている内は問題ないが一旦暴れると大変なことになると書いてあります。

※1.灰色のサイ(Gray RHINO)
米国の学者、ミシェル・ウッカー氏(Michele Wucker)が提唱している経済概念で、その著書「The Gray Rhino: How to Recognize and Act on the Obvious Dangers We Ignore」で用いられている。灰色サイのように通常は静かでだが暴れ出すと手に負えなくなるリスクを指す。同じような表現として「ブラックスワン(黒い白鳥)」があるが、ブラックスワンが稀にしか現れないリスクを指すのに対し、「灰色サイ」はいたるところに存在しているリスクであり意味が異なる。

かつての勢いはどこへ?天津はもはや三流都市なのか?

今回の数字修正を受け天津浜海新区のGDP規模は上海浦東新区の下になることが決定しました。また2017年の全国都市の経済規模序列も天津は、蘇州に敗れて全国代7位に落ちる見込みです。

上海浦東新区GDP値は、2016年が8731.84億元(15兆1千億日本円)、2017年は9,000億円(15兆5千億万円)を予想している。

中国の経済発展の中心地は、80年代が深セン、90年代は上海浦東、2000年からは天津浜海新区と言われていました。しかし、ここ2年で状況は変わり、今は河北省保定市の雄安新区と言われています。

天津浜海新区のGDPは、2010年には5030.11億元(約8兆6千億日本円)あり上海浦東新区を超えたとされましたが、水増し分を差し引けば昔から上海浦東に全く及んでいなかったたようです。

天津人、落ち込む所得にがっくり

90年代には、サムスン、モトローラや日系家電メーカーが多数工場を作りに発展した天津ですが、産業のサプライチェーンで最も収益が低い部分を担っていたため、天津浜海新区はブルーカラー労働者ばかりが増え、ホワイトカラーが育たちませんでした。結局、天津には電子業界が根付かず、地元出身の大きなハイテク企業は誕生しませんでした。

最近ある求人会社が発表した2017年冬季の全国37都市の中国人サラリーマン平均給与によると、北京が10310元(178,300日本円)で第一位、天津は6978元(120,700日本円)で第26位。これは、昆明、蘭州、貴陽、烏魯木齊(ウルムチ)などの西部都市よりも低い順位です。

天津市人民政府公式ブログ「天津発表」は、「胸が痛む!天津の平均サラリー6978元。」という題の記事を書きましたが、ネットの書き込みでは『三級都市になってしまった。。。』との記述があり天津人の落胆がうかがえます。

日本と天津は古くから貿易で関わりがありました、天津の凋落は日本経済の低迷とも関係があるような気がしてなりません。

情報ソース:2018年1月12日付け山哥看财经『天津GDP调降3300亿背后:白领工资落后贵阳 快成三线城市』より
画像ソース:天津市滨海新区人民政府より

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