『地条鋼』という言葉をご存知ですか?
地条鋼(dì tiaó gāng)問題といっても一般の人はあまり聞きなれないかもしれませんが、鉄鋼業界のニュースでは昨年から何度も取り上げられております。
地条鋼とは中国のB級鉄鋼のことです。適切な成分や品質制御がされてないため90%以上は粗悪品で引っ張り強度などが国の基準を下回ると言われております。
地条鋼の作り方は、非常にシンプルで大きな電気鍋(中周波誘導電気炉)を買って来てスクラップ鉄(屑鉄)を溶かし、型に入れ冷やすだけです。設備と材料さえ手に入れば誰でもできるので参入業者がタケノコのように増え地条鋼として一つの市場を形成するまでになりました。
その規模は非常に大きく、非合法企業も含めると中国全土の地条鋼生産能力は年間1億トン以上あると言われております。
これは2016年度の日本の粗鋼生産量1億516万トンに匹敵する生産量です。
地条鋼は鉄鋼市場の秩序を乱すだけでなく、環境問題も引き起こします。
地条鋼は、1トン生産するのに700KWh-800KWhも電力を使うと言われており中国政府のCO2削減および電力需給政策に悪影響をあたえています。
このような状況のなか、昨年ついに中国政府が動き出しました。一挙に地条鋼の製造業者600社余りの水や電力の供給を停止して閉鎖させたのです。本気で地条鋼の撲滅に乗り出した中国政府の動きに鉄鋼市場は反応をしました。そして、それが黒鉛電極の価格暴騰を引き起こしました。
黒鉛電極の価格が暴騰した原因
B級品でありながら大きな市場をもっていた地条鋼が手に入らなくなったため、正規鉄鋼メーカーへの注文が殺到しました。正規鉄鋼メーカーの多くは、アーク式電気炉を使っていたため、放電に使われる消耗品の黒鉛電極が品薄になり価格の暴騰を引き起こしたのです。
Φ500サイズと呼ばれる黒鉛電極においては、平均価格が2017年初めには1トンあたり1.29万元(日本円で約22万円)であったのが、同年9月には10倍近い12.4万元(日本円で約213万円)にまで跳ね上がり電極パニックと呼ばれるほど市場が混乱しております。
今年に入っても黒鉛電極の価格は高値で推移しており、そのほとんどが中国製であることから、日本の鉄鋼メーカーは黒鉛電極の調達に苦労をしております。世の中は何が起きるか分からない改めて感じました。
中国黒鉛電極の価格推移
一旦落ち着いた価格が年明けから再び上昇しております。引き続き非常に不安定です。