契約上のトラブルが発生したらどのように解決するか?
海外とのビジネスにおいて取引相手とトラブルが発生した場合は、当事者同士で責任の所在を明確にする必要があります。お互い話し合って解決できれば良いですが、双方の主張が対立し拗れてしまった場合は、公正な判断ができる第三者に解決を依頼しなければなりません。
第三者による解決方法は、大きく分けて2つあります。一つ目は、斡旋や調停と呼ばれるやり方で、両社の間を取り持つ人または企業に入ってもらい妥協点を調整してもらう方法です。ただし、斡旋や調整による合意事項には法律的な拘束力はありません。
もう一つが、仲裁人・仲裁機関・裁判所にトラブル解決の判断を一任する仲裁や訴訟と呼ばれる方法です。この場合決定事項には法律的な拘束力があり、従わない場合は強制執行されます。
もし、裁判を行うとしたらどこの国になるのでしょうか?
国際取引では英文契約書を取り交わします。その契約書の末尾の方にはたいてい裁判管轄(JURISDICTION)の項目があり、裁判を行う場所を取り決めます。もし、契約書を取り交わしてない場合は、トラブル発生時に当事者同士で裁判管轄場所を協議する必要があります。
では、裁判管轄はどこにすれば良いのでしょうか?相手国だと正しい審判がしてもらえるか?弁護士などの費用やコミュニケーションはどうなるか等々の心配があります。よって、多くの人は、自国の日本を希望します。日本の裁判所で訴訟が出来れば、言葉の心配もなく手続き的にも安心です。しかし、判決結果を実際に実行するにあたっては、日本で裁判をすることが必ずしも良いとは限らない場合があります。
例えば、日本の裁判所で訴訟を起こし勝訴判決を受けて、相手企業に対する損害賠償請求権も無事認められたとします。相手企業が判決内容をすんなり受け入れて賠償金の支払いに応じてくれれば問題はありません。しかし、もし判決内容を実行しなかったらどうなるのでしょうか?
相手が日系企業であれば強制執行で国内資産を取り押さえることができますが、他国に対する強制力はありません。つまり、日本の判決では、相手企業の海外資産を押さえる事は原則できないのです。もし相手国の資産を押さえようと思ったら、再度相手国の裁判所に提訴する必要があります。相手国での裁判には時間も費用もかかるし、同じように勝訴判決が出るかも保証されません。
トラブルの内容によっては、初めから相手国の裁判所で訴訟を起こす方が良い場合があります。よって、契約書上では、裁判管轄を日本だけの専属的合意管轄にせずに、日本以外の他の国での管轄を認める非専属的合意管轄で契約を結んでおくことも一つの手です。