輸出を行うにあたって、輸出貨物の申告は重要な手続きの一つです。
特にコンテナ重量情報の船長への申告義務は2016年7月1日にSOLAS条約改正により厳格化され、コンテナの総重量の計量・確定方法が明確となりました。
それに合わせて、日本でも「特殊貨物船舶運送規則」及び「危険物船舶運送及び貯蔵規則」の改正が行われ、近年荷主の皆様にはコンテナ重量の申告に関する責任が発生しました。
SOLAS条約の概要と改正経緯
SOLAS条約は「海上における人命の安全のための国際条約」の事であり、映画でも有名なタイタニック号海難事故を契機として生まれた、船舶の安全性確保のための規則を定める多国間条約です。
条約では貨物船に関して防火設備の規定や、緊急時の避難に関する規定等が定められており、コンテナ重量の船長への申告は既に荷送人に義務づけられていました。
しかし、コンテナ重量の誤申告に因ると思われる事故が後を絶たず、また昨今コンテナ船の急速な大型化が進んでいる事から、重量誤申告に伴うリスク・事故の及ぼす影響の拡大が予想されるという背景を受けて改正となりました。
(出典:国土交通省「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」より)
重量申告の方法について
①重量の申告までの流れ
重量申告までの流れは改正前と後で大きく変わりました。特に大きな変更点は重量の計測方法の確定です。
改正前 | 改正後 |
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・荷送人は以下の内容を含む資料を船長に提出。 (貨物の概要、貨物の総重量、貨物の特色) ・荷送人は船積み前に貨物の総重量が船積書類記載の重量と一致する事を確認。 | ・荷送人はコンテナ貨物の重量を決められた方法で計測。 ・計測した重量が船積書類に記載されているかを確認。 ・確認結果を船長とコンテナヤードの代表者に提出。 ※船長等へ重量の提出がない場合、コンテナは船積禁止。 |
②コンテナ総重量の重量確定方法
「Ⅰ総重量を計量」する方法と、「Ⅱ各重量を計量しその合計にコンテナ重量を加算」する方法の2つがあります。
③コンテナ重量情報の確定を行う者の登録
・荷送人自らがコンテナ重量確定を行う場合には、荷送人は国土交通大臣へ届出を行う必要があります。
・荷送人がコンテナ重量確定を第三者に委託した場合、第三者は国土交通大臣への登録を行う必要があります。
(出典:海事局「国際海上輸送コンテナの総量の確定方法の制度化について」)
3.重量申告誤り・漏れにより想定されるリスク
①重量誤申告による賠償責任
重量誤申告に起因して荷崩れなどの事故が発生した場合の、他人の財物の損害又は身体の損害に対する損害賠償責任。
(船会社に対する責任、荷役業者に対する責任、他の荷主に対する責任等)
②コンテナの船積禁止による費用損害
・総重量通知の漏れ、計測条件を充足していない等により船積できなかった場合の費用。
(臨時保管費用、返送費用等)
・船舶に積載されなかったことによる遅延に伴い発生する費用。
(代替品急送費用等)
誤申告は小さな間違いかもしれませんが、上記のようなリスクが想定されている事から、現在どのように重量を計っているのかその計測方法に問題ないのかを今一度確認してみても良いのかもしれません。