海外向け見積もりで必ず記入しておくべきものは、誰がどこまでの輸送費を支払うかです。

国内取引だと、小さな製品なら輸送代は、千円以下です。もし、見積書に輸送費負担についての記載を忘れ、その費用を負担したとしても、金額は少額です。

しかし、国際取引の場合は、そうはいきません。飛行機で送ると、輸送代や保険料、関税などを合わせるとすぐに数万円になります。大きい物だと数十万円になることもあります。小規模の事業者にとっては、大金です。

そこで見積書には、

1.どこまで物を送り届けるのか?
2.万が一の時のリスク移転時点は何処か

を必ず明記します。

国際貿易では、これらの条件を文章で書くのではなく、インコタームズと呼ばれる世界共通で使える貿易用語を使って見積書に明記します。
FOB,CIF,EX-WORKSなどが該当します。

見積もりでよく目にする条件は、FOBです。

ところが、飛行機だろうが船だろうが、なんでもFOBを使う人がいます。輸送中の貨物のトラブルは滅多に起きないので、あまり気にしてないのかもしれませんが、時々、FOBの事をよく理解してなくて使っている方もいらっしゃいます。

実際、私は、海外向けに最初からFOBで見積もることは殆どありません。特別な事情がなければ、FCAを使います。

その理由は、FCAの方がよりリスクが少ないからです。

では、FOB、FCAのリスク移転場所の違いについて説明したいと思います。

FOBのリスクの移転

FOBは、Free on Board (本船渡条件)の略であり、海上輸送で使う貿易規則(条件)の一つです。FOBで契約した場合、売主(輸出者)は、貨物を買主(輸入者)が指定した船の船上に積み込むまでの一切の費用と危険を負担します。

FOBの条件を使う場合に注意しておくことは、売主から買主へのリスク責任の移転(危険負担の分岐点)が貨物が本船の船上に置かれたときであるという事です。
なぜ注意が必要かというと、たとえば、買主(輸入者)から指定された輸送業者(CARRIER)に貨物を引き渡した後、港でコンテナ船に積み込まれるのを待っていた時に、大地震が発生し貨物が破損した場合、貨物はまだ船上に置かれていないので、破損の責任は、原則売主(輸出者)側が負うことになるからです。

FCAのリスク移転

FCAとは、Free Carrier(運送人渡条件)の略で、費用負担範囲においては、FOBと同じで、船賃や海上保険料などを負担しません。しかし、リスクの移転時点はFOBとは異なります。

つまり、売主から見た場合、FCAの方がFOBよりリスク負担の範囲が小さくできるのです。また、FOBは、海上輸送用の条件で、本来であれば航空便では使えませんが、FCAは、海上・航空・鉄道・陸上などあらゆる輸送形態で使えます。

国際貿易について、リスク回避は非常に大切です。もし、深く考えずにFOBを使っていた人は、是非、FCAに切り替えましょう。