経済ニュースでよく出る金利と為替レートの関係について
経済ニュースを見ていると、『アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が金利を上げるとか据え置く』とか、『日銀がマイナス金利を継続する』とか難しいことを言ってます。海外と取引する人にとっては、金利の動きが為替レートにどう影響するのか気になるところです。その時に使えるのが、金利平価説(きんりへいかせつ)と呼ばれる考え方です。経済を勉強した人であれば良くご存じと思いますが、一般の人には馴染みがない言葉だと思うので出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。
金利平価説(きんりへいかせつ)とは?
英語では、Theory of Interest Rate Parity と呼ばれております。Interest Rate は読んで字のごとし金利の意味です。Parityは、等価またはイコールを表すParに性質・状態・程度などを表わす名詞語尾Tyが付いたもので、一致、同等、等価の意味があります。この金利平価説を簡単に言うと、2国間の為替レートは、両国間にある金利差に一致(または等価)するように動いていくという理論です。と言っても文だと分かり難いので、実際の例で説明したいと思います。
実際の金利政策から読む為替レート
今、為替レートが1ドル=100円であったとします。米国のFRB(連邦準備制度理事会)が利上げを実行し年率3%にしました。一方、日本の日銀は、ゼロ金利政策で年率0%の継続を決めました。この場合、為替レートがどのように動くか金利平価説で考えてみます。
米国の金利が年率3%になったということは、今1ドルで米国の国債を買った人は、1年後に現金化すると年利3%分が増えて1.03ドルがもらえます。一方、同じ日に1ドルと同じ価値である100円で日本の国債を買った人は、1年後に現金化しても100円のままで変りません。
金利平価説では、どちらの国の通貨をもっていても価値は同じ(平価)という考えですので、1年後の1.03ドルと100円は、価値が等しくなる必要があります。この式を成り立たせるには、貨幣の価値を同じにする為替レートが必要です。
これを式で表すと、
になります。
あとは計算すれば良いだけで、為替レート(X)=100(円)÷1.03(ドル)=約97.1 になり、ドルと円の価値を同じにする為の為替レートは、1ドル=約97.1円という事が分かります。
米国が利上げした時点の為替レートが1ドル=100円ですから、金利平価の理論で考えると、これから1ドル=97.1円、つまり円高ドル安に向かうと考えられるわけです。
国際貿易では、為替レートの変動により企業の収益が大きく変わります。日々のニュースを見ながら中長期の為替レートを考えておく事は非常に重要です。勿論、実際の為替レートは、国の経済状況、国際収支のトレンド、景気サイクル、インフレ率、政府の為替介入など複雑な要因が合わさって決まるので専門家でも予想は困難です。しかし、金利平価の理論は、難しい計算ではないので覚えておけば経済ニュースがより深く理解できるようになります。
因みに、金利平価説の他にインフレ率を用いて為替レートを考える購買力平価説(こうばいりょくへいか)もあります。これは、1物1価の法則でどこで買っても値段は一緒になるとの考えです。計算は、金利の代わりにインフレ率を使うだけですので省略しますが、米国のインフレ率が上がれば円高に向かうと考えます。