2020年1月1日、10年ぶりにインコタームズが改定され「インコタームズ2020」が発行されました。その主な変更点について以下の通り紹介します。
7つの変更点
- 積込済みの付記のある船荷証券とインコタームズFCA規則
- 負担する費用の明確化
- CIFおよびCIPにおける保険補償の水準の相違
- FCA,DAP,DPU,DDPの各規則における売主または買主の運送手段を用いる運送の取り決め
- DATの廃止とDPUの新設
- 運送契約の義務と費用において、安全関連の要件を含めること
- 利用者のための解説ノート
今回は特に重要な3.と5.について詳細をご説明します。
CIFおよびCIPにおける保険補償の水準の相違
インコタームズ2010のルールでは、CIFおよびCIPはどちらも、「協会貨物約款の(C)約款又は類似の約款により規定されている最低限の補償範囲に準拠する貨物保険を売主のコストで手配する」義務を課しています。(協会貨物約款:Institute Cargo Clause(略称I.C.C.))
インコタームズ2020では、CIFとCIPで異なる最低限の補償範囲を設定することが定められました。ばら積み船で多く使用されるCIFでは貨物性質・リスクの点から引続き協会貨物約款(C)がデフォルトで適用されます。これに対しコンテナ輸送を想定したCIPでは、売主は貨物約款(A)に準拠する保険を付さなければならないというルールに変更されました。
※ただし、いずれも関係者間の協議により条件を変更することは可能です。
なお、協会貨物約款(I.C.C.)の補償範囲は以下の表の通りです。
DAT の廃止と DPUの新設
DAT(Delivered at Terminal/ターミナル持込渡し)が廃止となり、
DPU(Delivered at Place Unloaded/荷卸込持込渡し)が新設されました。
DAT では貨物が到着して『ターミナル』で荷卸しされた時点で引き渡されるのに対し、DPU では買主の手に委ねられた時点で引き渡されるとされています。
DPUは目的地が「ターミナル」に限らず、いかなる場所でもあり得るという実態を反映させたものです。
なお、DATが廃止となったからといって今後DATは使えないのかというと、そういうわけではありません。売り手と買い手との間で事前に明確な合意があれば、基本的には問題はありません。