海外との取引で口約束は有効なのか?
米国大統領トランプさんが大統領令にさらさら署名しているシーンをテレビで何度か見ました。まるで高級レストランで食事した後の会計サインのようです。
あんな風にサインで来たらさぞ気持ち良いと思いますが、私たち民間企業が真似していたらとんでもない事態に陥ります。
では、サインをしなくて口約束だけであれば大丈夫なのでしょうか?
政治の政界では口約束は忘れてしまえば無効になるようですが、法律的にはどうなのでしょうか?
まず初めに重要な事は、世界の何処の国でも、当事者の一方が申込をして相手方が承諾すれば売買契約は成立するということです。
問題は、その契約が書面によってなされることが要求されるか否かです。日本を含め殆どの国は、方式自由の立場をとっており、たとえ口約束でも当事者同士が合意していれば有効とします。
因みに、日本を含め世界85カ国が加盟しているウィーン売買条約(通称CISG)においても、第十一条で【方式の自由】の記載があり、間接的に口約束が有効であるとしております。
A contract of sale need not be concluded in or evidenced by writing and is not subject to any other requirement as to form. It may be proved by any means, including witnesses.
売買契約は、書面によって締結し又は証明することを要しないものとし、方式について他のいかなる要件にも服さない。売買契約は、あらゆる方法(証人を含む。)によって証明することができる。
※補足:ロシアや英米には独自の法律があるので、もしこれらの国で口約束で契約する場合は国際弁護士に相談が必要です。
海外取引のリスクと対処法について
契約当事者間で合意があれば、どんな方法でも契約が有効になるという事は、裏を返せばなんでも証拠になってしまうということです。
もし、トラブルになった時に、相手方が、契約前のE-mail、議事録、ちょっとしたメモ書きなどを証拠に契約に定められてない条件があることを主張してくる場合もあり得ます。
言った言わないの言い争いになれてない日本企業にとっては、こういった交渉は出来るだけ避けたいところです。
特に工業製品を海外企業に販売する場合は、契約締結までに、仕様書・支払条件・検収条件などいろいろと書類をやり取りする事が多く、どれが最終的に合意した資料か分かり難くなる場合があります。
そんな時は、それまでのやり取りの有効性を全て無効にして、最終的にサインする契約書内に入れ込むことをお勧めします。その時に売買契約書に記載できる良い文章があったのでご紹介しておきます。
(和訳)本契約は、本契約の主題に関する両当事者間の全ての合意を網羅しており、両当事者の従前の全ての合意、表明および了解事項に優先し置き換わるものである。
※参照元:『はじめての英文契約書の読み方』著者:寺村淳 発行所:株式会社アルクより