新元号「令和」と海上貨物保険

2019年5月1日より新元号である『令和』がスタートします。社内システムで西暦でなく『平成』を使っていた企業は、令和への切り替えが必要です。

もし、あなたの会社が使っている運送業者・船会社・航空会社が年号切り替えによるシステム障害を起こし貨物の輸出入業務が出来なくなり、貨物の販売機会を失ったり、商品を腐らせてしまったりした場合は、海上保険は保証してくれるのでしょうか?保険の専門家に聞いてみました。

海上貨物保険の専門家の回答

年号変更トラブルによる保険の補償について

2000年問題(Y2K問題、ワイツーケイ問題)以降ほとんどの貨物海上保険会社は、年号変更のシステム障害を起因とした損害を想定できないリスクの一つとして扱っており、保険約款には免責事項であると記載しています。よって令和への元号変更によるシステム障害で貨物が運送できなくなり荷主が損失を被っても原則保険会社は保険金請求に応じません。

古い年号で記載した保険期間について

海上貨物保険証には保険期間を「平成○○年○月○日~平成○○年○月○日」と表記している場合があります。もし、保険期間の終了日が存在しない平成33年7月12日である場合、保険代理店や保険会社の指示通りに令和3年7月12日に訂正すれば問題なく保険期間を引き継げます。

まとめ

運送業者・船会社・航空会社は、2000年問題のときにシステムの改修作業を完了しており、新元号変更にともなうシステム障害が発生するする可能性はほとんど無いと思われます。しかし、世の中に絶対はありません。非常に大事な貨物を輸出入する場合は、万が一のことを考えて5月1日、2日の出荷を見送る方が良いかもしれません。

2000年問題って何?

四桁の西暦年号を下二桁だけで処理していたシステムが、2000年に誤作動を起こす可能性があるとされた問題です。昔のコンピューターは記憶容量が少なかったため、多くの企業がメモリを節約しようと西暦年号を下二桁で処理していました。しかし、2000年は下二桁が『00』となるためパソコンのプログラムによっては、1900年や2100年と解釈してしまったり、『00』を異なる割り込みコマンドとして誤認識する可能性があったのです。当時、国際物流で問題が発生し世界経済が混乱するのではと言われていましたが、システムエンジニアの懸命の作業で大きな混乱は発生せずに済みました。

特約記載事例

日付誤認に起因する損害不担保特別約款の記載例

貨物海上保険普通保険約款、運送保険普通保険約款および保険証券記載の特約の規定にかかわらず、当社は、直接であると間接であるとを問わず、次のいずれかの事由によって生じた、または次のいずれかの事由に関連して生じた損失、費用および法律上または契約上の損害賠償責任に対しては、保険金を支払いません。

(1)西暦2000年およびそれ以外の年月日または時刻のデータもしくは情報の処理、変更または置換に関連してコンピューター・ハードウエア、ソフトウエア、情報システム、システム作成上のプログラム等(以下「コンピューター等」という。被保険者または第三者のいずれの所有であるかを問わない。)に生じた誤作動または機能喪失。いずれもその発生時期を問いません。

(2)(1)に規定する年月日または時刻の変更の準備または対処のためコンピューター等に施した修正および試行。まはたその修正に関連するその他のサービス。

(3)(1)に規定する年月日または時刻の変更に関する被保険者または第三者による行為、不作為または決定に起因して発生した財物または機器の不使用または利用不能。