どんなに大きな船社でも、ある時突然倒産してしまう事が有ります。

2015年9月29日に大手船会社が法定管理(日本の会社更生法に相当)を申請したという事態は皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。

その際該当の船社が運航していた船舶は全て航行がストップし、多くの荷主が貨物を受け取れない状態となりました。今後も同様の事態が起きないとも限らない為、船社倒産時に発生する状況について纏めました。

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船社が倒産した場合、何が起きるの?

船社と一言に言っても①船舶の所有者である船主と、②船主から船舶を借り受けて運航する定期傭船者がいます。どちらが倒産したかによって、発生する事態は変わってきます。

①船主が倒産した場合

・運航停止及び追加費用発生の可能性
傭船者は荷主との運送契約履行の為、代替船等を手配して継続輸送を行う場合が多いです。

しかし「運送契約の当事者は船主である」として傭船者が継続輸送を行わない場合も想定されます。また、傭船者から積替え関係費用等を追加請求される可能性も有ります。

②定期傭船者が倒産した場合

・船主が貨物に対し留置権を行使する可能性
定期傭船者が倒産してしまうと、船主は定期傭船者から運賃の支払を受けられない可能性が発生します。

その際船主は、船舶に積載された貨物に留置権を行使し、目的地までの追加運賃や中間港での港湾荷役関係費用を請求する可能性が有ります。

・後払い運賃請求の可能性
船主が運送人となる船荷証券が発行されている場合、追加運賃の支払は拒否できますが、前払運賃で全ての運賃が支払われていない場合は、残存運賃の支払を船主から請求される可能性が有ります。

船社倒産したときに請求された費用を補償する保険はないの?

上記の通り船社倒産が発生した場合、荷主の皆様には船主または傭船者から費用を請求される可能性が有ります。

このような費用が請求された場合に備える為にはどうすれば良いのでしょうか?

実は海上保険により補償が可能となる場合が有ります。以下にて船社倒産時に発生する継搬費用と貨物事故への、海上保険での対応ついて解説します。

①海上保険での継搬費用の扱いについて

海上保険では、ICC(A)第12条において運送人が運送契約履行能力を喪失したことにより生じた継搬費用は補償の対象と規定しています。

ただし、運送人が運送契約履行能力を喪失したという判断を行う為には、貨物の状況や当該継搬費用発生の合理性等の判断が必要な為、個別案件毎に保険会社に確認が必要となります。
※ICC(B)、ICC(C)にはこの条文が存在していないので、ICC(A)で契約している場合に限ります。また、荷主が貨物の船積前に船社倒産が発生する可能性を知っていた場合は、免責となります。

②船社倒産時に発生した貨物への損害の扱いについて

船社倒産が発生した状況下で生じた事象により貨物に損害が発生した場合は、海上保険にて補償が可能です。
※船社倒産が発生した状況下で生じた事象は、一般的な事故以外に、倒産により給料が払われない事から
従業員が貨物を盗んだ、従業員が貨物を破壊した等が想定されます。

なお、実際に船社倒産が発生した場合における損害事故の保険求償可否においては、倒産の状態や航海の打ち切り状況により個別に精査する事となる為、ケースバイケースでの判断となります。

実際、2015年の船社が法定管理申請を行った際は、「倒産」とは判断されず、継搬費用の支払は行われませんでした。その為、船社倒産が発生した際はまずは輸送中の貨物の状況の確認と、船社からの継搬費用請求の有無、継搬費用の請求が有る場合は海上保険を契約している保険会社との継搬費用求償に関する相談が必要です。

出典:
東京海上日動火災保険株式会社「韓進海運に係る一連の事態と外航貨物海上保険」
損害保険ジャパン日本興亜株式会社「船社倒産と外航貨物海上保険適用について」

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