意外と知らないFOBとFCAの意味
海外から自社製品の見積もり依頼が来たとき貿易条件をどのように設定しますか?
海外までの運送手配が面倒なので、国内渡しにしたいと考え、FOB JAPANやFCA TOKYOと書く人も多いと思います。
確かに、FOBやFCAで契約すれば、日本国内から仕向け地までの海上運賃、航空運送費、保険料は、すべて買主の手配になります。
しかし、たんに国内取引にしたいからという理由だけで、FOB JAPANやFCA TOKYOと記載するのは危険です。
FOB JAPANの意味
FOBは、船を使った運送専門の貿易条件です。飛行機を使った運送には適しません。
インコタームズ2010の解釈では、FOB契約の場合、売主は貨物を買主が手配した船の甲板上(ON BOARD)まで運ぶ必要があります。また輸出通関費が発生する場合は、売主が負担する必要があります。
つまり、FOB JAPANは、売主が日本全国のどこの港であろうと、貨物を運送し、輸出通関をして、船に乗せるまで一切の責任と費用を負担する条件なのです。
もし、買主が九州 鹿児島県の港で船積みを希望すれば、貨物が日本のどこにあっても鹿児島まで運び船に載せる必要があります。
FCA TOKYOの意味
次に、FCA TOKYOで契約した場合は、どうでしょうか?
FCAは、船・飛行機どちらの運送でも使える条件で、買主が指定した運送人に貨物を引き渡すまでの費用を売主が負担する必要があります。もちろんFOB同様に、輸出通関費用が発生したら売主負担になります。
つまり、FCA TOKYOは、売主が東京都内の港であろうが、空港であろうが、買主が指定した運送人まで貨物を運び、輸出通関費用も負担する条件なのです。
実際にあったトラブル事例
電子部品を製造するA社(所在地:東京)は、海外のX社から引合いを受けました。
製品は、手で持てるほどの小箱に梱包されており、A社はDHLやFEDEXでの航空運送を想定し、1箱あたりFCA TOKYO JPY2,000.-で見積書を提出しました。そして間もなく海外A社から100個(総額20万円)の注文が来ました。
1か月後、製品発送準備が整ったA社は、事前にいただいていたX社のDHLアカウント番号を使い受取人払いで集荷依頼しようとしたところ、X社の担当者から、『物流量が多いのでコンテナ船で輸送する事になった。ついては、貨物を東京港の指定フォワーダー倉庫まで運んでほしい。』との連絡が入りました。
自社まで集荷に来てくれれDHLでの出荷しか想定してなかったA社は、港までの費用や輸出通関費を見積金額に含んでいませんでした。しかし、すでにFCA TOKYOで契約をしていたので、X社の指示に従うしかありません。
結局、A社は、100箱の注文を頂いたにもかかわらず、想定外の出費で損失を出してしまいました。
貿易規則インコタームズを策定している国際商業会議所 (International Chamber of Commerce: ICC) は、貿易条件を使う時は、できるだけ具体的な場所を書くことを推奨しています。
A社の場合、もし見積書にFCA TOKYOといった曖昧な書き方をせずに、FCA , ABC CORP,1-2-3,XXXX,TOKYO,JAPANと具体的な場所を書いていれば、上記のようなトラブルは避けることができました。
FOBやFCAを使うときは、何処で貨物を引き渡すのかよく考えて使う必要があります。FOB JAPANやFCA TOKYOのような買主の選択範囲を拡げる契約は、出来るだけ避けましょう。