2016年における世界の産業ロボットの市場規模は、132億ドル(約1兆4,400億)と言われております。

中国大手スマートフォンメーカである小米科技の年間売上が150億ドル(約1兆6,400億円)ですので、産業ロボットの市場規模は、スマートホンメーカー1社より小さいのが現実です。

しかし、中国政府は、産業ロボットの未来に期待しており、中国のロボットメーカーと部品メーカーの技術革新を後押ししています。

これにより、2017年の中国国産の産業ロボットの生産量は急激に伸び、2015年の68,500台から倍増の12~13万台になりました。

技術力も向上しており、特に中国製サーボモータやコントローラーの性能は大幅に改善しております。

そして、ついに産業ロボットの中核部品であり、日本メーカーが独占している減速機分野にも、中国メーカーが本格参入をはじめました。

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国産化が進む中国の産業ロボット業界

産業ロボットは、本体、減速機、サーボモータ、コントローラー4つの部品性能で価格が決まります。

これまで中国の産業ロボットメーカーは、本体の組立製造が中心であり、減速機、サーボモータ、コントローラなどの中核部品の多くは日本メーカーから調達しておりました。

2016年に中国政府より発表された「ロボット産業発展計画(2016-2020年)」では、中核部品の国産化率を50%以上にするように求めており、中国は急ピッチで国産化をすすめています。

たとえば、産業ロボットメーカーの安徽埃夫特智能装備有限公司(ANHUI EFORT INTELLIGENT EQUIPMENT)は、2015年に、固高科技(深圳)有限公司とコントローラー製造の合併会社を設立し、今では同社が製造する産業ロボットの3割に採用していると言われております。

その他にも、広州数控設備有限公司(GSK CNC EQUIPMENT)瀋陽新松機器人自動化股份有限公司(Shenyang SIASUN robot)上海時達機器(Shanghai STEP Robotics Corporation)南京埃斯頓自動化股份有限公司(Estun Automation)、>蘇州汇川技術有限公司( Inovance technology)広東拓斯達科技股份有限公司(Guangdong Topstar Technology)などのロボット製造メーカーが、中国国内の部品メーカーを強力にサポートしています。

日系メーカーが独占していた減速機市場も変化の兆し

減速機の分野では、2013年までは日本メーカーが世界市場を独占しておりました。
当時、日本メーカーは、その優位な立場を利用し中国市場向けに強気の価格設定をしていたと言われており、中国の産業ロボットメーカーにとって減速機は最も高価な部品でした。ロボットの種類によっては、総原価に占める減速機の割合が、35%になる場合もありました。

2017年9月放映の中国テレビ番組CCTVに出演した減速機メーカー、蘇州緑的諧波伝動科技有限公司(Leaderdrive)の副社長李謙氏のインタビューによると、2009年以前、中国のロボットメーカーが日本製波動歯車装置(ハーモニックドライブ)を手に入れる場合は、ヨーロッパの市場価格の2~3倍を支払う必要があったそうです。

国際価格で2~3千元の製品を中国企業は、1万元払わないといけないことに疑問を持っていた李氏は、あるとき世界トップの重電メーカーABB社が、波動歯車装置(ハーモニックドライブ)市場を独占している日本メーカーのビジネススタイルに不満を持っていることを聞き、自ら製造する決心をしたそうです。

減速機市場におけるメーカーシェア

減速機には、たくさんの種類があります。代表的なのが、波動歯車装置(ハーモニックドライブ)RV減速機です。

波動歯車装置(ハーモニックドライブ)は、人間に例えると手の関節にあたり、小型、軽量、高精度が要求される製品です。

RV減速機は、人間でいう足の関節に相当し、高い搭載力が要求される製品です。自動車産業を支える大型産業ロボットでは、RV減速機が多く使用されます。

中国のネット情報によると精密減速機の世界市場の75%は、日本のナブテスコ㈱㈱ハーモニック・ドライブ・システムズが独占しています。

1位はナブテスコ社でRV減速機を主力製品として世界市場の約60%のシェアを持っています。2位は、ハーモニック・ドライブ社で、波動歯車装置(ハーモニックドライブ)を主力製品として世界市場の約15%のシェアを持っております。

上記の減速機の2大メーカーの次に来る世界第3位メーカーは、住友重機械㈱であり、これも日本メーカーです。

4位になってやっと、スロバキアの精密減速機メーカースピネア(Spinea)が入ります。

ただし、世界減速機市場の75%をナブテスコシャとハーモニック・ドライブ・システムズが独占しているという情報は2014年の話です。よって、根拠とした数字としては2013年以前のデータを基にしています。

中国の減速機メーカーは、2013年から減速機市場に本格参入をしており、現在の日本メーカーの世界市場における占有率は、低下したと考えられます。

中国の新興減速機メーカーの最新動向

波動歯車装置(ハーモニックドライブ)の蘇州緑的諧波(Leaderdrive)社

波動歯車装置(ハーモニックドライブ)の製造メーカーである蘇州緑的諧波社は、2012年に発売をスタートしました。

初年度は、数百台しか売れませんでしたが、2016年には6万台になり、2017年には100 %に近い成長を実現し、総販売台数は11万台を超え、営業売上で初めて2億元(約35億円)を突破しました。

なお、販売台数における海外売上比率は、2016年の10%から2017年は15 %に増加しており、海外市場でも確実にシェアを伸ばしております。

現在、蘇州緑的諧波社の波動歯車装置(ハーモニックドライブ)中国市場占有率は60 %に達していると言われております。

製品の生産が追い付かないため蘇州緑的諧波社は、大規模な工場拡張を行っており、2018年に投資した新工場は、年間50万台の生産能力があります。既存工場の生産能力を加えると年間の生産能力は60万台規模になります。

一方、日本のハーモニック・ドライブ・システムズ社も工場拡張をしており、現在、同社の総生産台数は、年間120万台と言われております。

ハーモニック・ドライブ・システムズ社と蘇州緑的諧波社は、波動歯車装置(ハーモニックドライブ)の生産量で世界2大メーカーとなりましたが、生産能力で見ると蘇州緑的諧波社は、ハーモニック・ドライブ・システムズ社の半分以下です。今後の投資状況について注目しておく必要があります。

蘇州緑的諧波社以外にも、浙江来福諧波電動股份有限公司というメーカーが波動歯車装置(ハーモニックドライブ)を製造しております。浙江来福諧波電動社の出荷台数は1万台近くであり、2017年の営業売上は2000万元(約3億5000万円)程度であり、蘇州緑的諧波社の10分の1しかありません。

RV減速機の南通振康机械

次に、RV減速機に関しては、中国最大メーカーの南通振康机械有限公司(NANTONG ZHENKANG MACHINERY)が有名です。
南通振康机械社の減速機への参入時期は、2013年であり、波動歯車装置(ハーモニックドライブ)の蘇州緑的諧波とほぼ同じ時期です。参入初年度は、数百台しか売れませんでしたが、2017年度に前年度比120%増の1.5万台のRV減速機を生産、2018年は倍の3万台の生産計画があります。

一方、世界トップの日本ナブテスコ社の生産量は、2017年初めの年生産量が64万台です。これは、南通振康机械社の同年における生産台数の40倍以上の量です。
ナブテスコ社はすでに70億円の設備投資を実行しており、2018年の下半期には年間生産能力が84万台に増えます。

南通振康机械社は、RV減速機の分野で爆発的成長を遂げましたが、生産量を比べると、世界で独占している日本のナブテスコ社とはまだ相当の差があります。
これから同社がナブテスコ社との差をどうやって縮めるのか注目しておく必要があります。

中国RV減速機の他メーカーとしては、秦川機床工具集団股份公司(Qinchuan Machine Tool Group)がありますが、2017年第4四半期の月産生産量は約850台であり、年間生産量は1万台に達しておりません。

また、上海力克精密機械有限公司(Shanghai Like Precision Machinery)の2017年生産量は1万台に近づいており、大規模な工場拡張をおこなっています。

情報参照元:宁南山『2017年中国制造业发展简析』より