今回は『共同海損(General Average)』についてご説明します。

共同海損とは

『共同海損』とは、古くは紀元前の昔から行われてきた「海の慣習」で、船舶・貨物等を海上輸送の運命共同体と考え、その共同の安全や利益を守るために、故意にかつ合理的に支出された費用(救助費用、代船への積替え費用など)または犠牲となった損害(消火作業により被った貨物の損害など)を、救われた各々の価格(負担価格)に応じて分担する制度です。

例えば・・・

船舶衝突、船舶火災が発生!
→ 船舶および貨物が危険にさらされる
→ ・沈没を免れるために故意に座礁
・船足を軽くするために積み荷を投げ捨てる
・消火の水などによって生じた損害
などが共同海損犠牲損害として認定されます。

→ ・避難港の費用
・避難港における乗組員の賃金
・避難港における仮修理費用
などが共同海損費用と認定されます。

これらの共同海損犠牲損害および共同海損費用が、最終的に助かった船舶および貨物によって補償されます。

このような損害に関するルールや精算方法は「ヨーク・アントワープ規則」という統一国際規則に規定されており、世界的に使用されています(傭船契約や船荷証券に契約の内容として取り込まれています)。

共同海損が宣言されたら・・・

荷主は貨物を受領するために、
①共同海損盟約書(General Average Bond)
②共同海損分担保証状(General Average Guarantee Letter)※貨物保険がある場合
③積み荷の価格申告書(Valuation Form)
④船積書類一式
などを準備、手配して船会社に提出することになります。

上記②は保険会社が発行しますので、共同海損になるか否かに関わらず、海難事故が発生しましたら、【船舶の所在地、船舶・貨物の動向、貨物の引き渡し予定】などの情報を速やかに保険会社へ通知する必要があります。

≪実務的な流れ≫
✓共同海損事故が発生すると・・・
船会社(船主):共同海損とすることを宣言⇒ 関係荷主に対して「共同海損宣言書(General Average Declaration Letter)」*が送付される。
*事故の概要および事故を共同海損事故とすることを宣言した通知書

貨物を受領するためにすること

荷主:下記の書類を手配する。
① 共同海損盟約書(General Average Bond)
:船会社(船主)が宣言した共同海損精算処理について同意する書面
② 共同海損分担保証状(General Average Guarantee Letter)
:貨物の保険会社が荷主の負担すべき共同海損分担金を、荷主に代わって船会社(船主)に対して支払うことを保証するもの →保険会社に発行を依頼する。
③ 積み荷の価格申告書(Valuation Form)
:貨物の共同海損分担金の金額を、算出するために必要な書類。
一般的にはインボイス価格を記載する。
④ 船積書類一式
:B/L、Invoice、Packing List など
※上記以外にも、事故のケースによって提出を求められる書類があります。
⇒以上の書類を揃えて、船会社(船主)または海損精算人(GA Adjuster)に提出する。
⇒貨物を引取り

貨物を引き取ったら・・・

荷主:貨物の状態を確認 →損害があればSurvey を依頼 →損害額確定 →保険求償

■その後の流れ

共同海損精算人
:船体・貨物などの各関係者の分担額を算出し、共同海損精算書が作成される。
⇒保険会社に精算書と請求書が送付される。
保険会社
:内容を精査し、精算内容に異存がなければ精算人(または船主)に支払う。
精算には通常事故発生から1~2年ぐらいを要し、大規模な海難事故の
場合には、5 年以上かかることもあります。

≪無保険のときの注意点≫

共同海損が宣言された場合、各荷主に貨物金額以上の費用と手続きの手間が発生します。
海上保険を契約していれば、前記「■貨物を受託するためにすること」②共同海損分担保証状を保険会社が発行し貨物を受け取ることができますが、無保険の場合、荷主は、共同海損分担金を精算完了後に支払う保証として供託金(精算終了後に確定した分担金と相殺されます)を船会社へ支払わなければ貨物を受け取ることができませんのでご注意ください。