輸出FOB保険のリスク
別のブログでも書きましたが、輸出契約において貿易条件をFOB(Free On Board/本船渡条件) またはCFR(Cost and Freight/運賃込条件)とした場合、売手は、たとえ輸出FOB保険を掛けていても、地震・噴火・津波による貨物の被害まではカバーされません。では、どうやって売手(輸出者)は、地震リスクが回避すれば良いのでしょうか? 方法としては以下の3つがあります。
方法1.貿易条件をFOB/CFRから、EXWに変更する
EXW(Ex Works/工場渡し)において、売主の危険負担は、貨物の処分を買主に委ねた時に移転します。よって、もし引き渡し場所を売主の御社倉庫にしておけば、倉庫から出た後は、貨物に何が起きても責任が及ぶことはありません。EXWは、売主にとって保険付保の手間もなく、危険負担も無いのでとても良い条件と言えます。しかし、買手である輸入者の立場になって考えると、異国である日本の集荷までアレンジする必要があります。FEDEX・DHL・UPSなどの集荷まで一貫して請け負う国際宅急便を使うような貨物でない限り、買主はEXWを嫌がる可能性があります。
方法2.貿易条件をFOB/CFRから、FCA/CPTに変更する
FCA(Free Carrier/運送人渡条件)または、CPT(Carriage Paid To/輸送費込条件)において、どちらでも売主の危険負担は、買主である輸入者が指定した運送人に貨物を引き渡した時点で買主に移ることになります。コンテナ輸送の場合は、指定場所で輸送人に貨物を引き渡した後は、コンテナヤード内で地震がおきて貨物が損傷を受けても売主の御社は損害の責任を負いません。ただし、輸送人に引き渡すまで(例えトラックで港まで搬送中)に地震に遭遇した場合は、売主が責任を負う事になります。
方法3.貿易条件をFOB/CFRから、CIP/CIF/C&Iに変更する
CIP(Carriage and Insurance Paid To/輸送費保険料込み)、CIF(Cost Insurance and Freight/運賃保険料込み)、C&I(Cost and Insurance/保険料込み)で利用する保険は、専門用語では外航貨物海上保険と呼ばれており、通常、日本の保険会社は、英国のロンドン保険業者協会が制定した協会貨物約款/Institute Cargo Clauses(ICC)を採用しております。この保険は、保険範囲によってICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の3つに分かれております。ICC(A)またはICC(B)を選択すれば、地震災害も担保され、しかも、保険範囲はWarehouse to Warehouseとなる為、売主の倉庫から買主の国の指定倉庫まで付保できます。
ただし、CIP、CIF、C&Iでは、輸出者である売手が保険を掛ける必要がるので、もしこの条件で契約する場合には、事前に保険料を踏まえた上で契約を結んでおく必要があります。
実務での対策方法
私は、輸出FOB保険のリスクを知って以来、自分から見積を作る時は、海上輸送航空輸送どちらでも適応でき且つリスクが少ないFCA、CIPを使う事にしました。知り合いでは、そんな細かい事を気にしない人もいますが、長年貿易をやっているとちょっとした事の大事さが実感で分かるようになります。万が一の自体が発生したら会社の経営に響くような貿易取引は経営者としてやってはならない事だと思います。