うっかり引き受けそうになる海外からの依頼、アンダーバリュー取引とは?
海外に製品を販売していると、輸出インボイス価格を変更してくれないか?と言ってくるお客がいます。
でも、『あーいいよ!』って気楽に答えないでくださいね!
これは、アンダーバリュー取引(英:Under Value )と呼ばれており、輸入申告価格を低くし関税の支払いを安く抑える貿易における不正取引の一つです。
人間は弱いもので、良くない取引だと分かっていても、実際に脱税するのは自分ではなく、輸入者である海外の買い主側であり、契約通りにお金がもらえるのであれば、出荷書類の改ざんくらいは融通きかせてあげても良いのでは?と考える人もいます。
十分な貿易経験と知識を持っていて、それでも敢えて、アンダーバリュー取引に加担して痛い目に合うのは、自業自得です。
しかし、貿易の知識が少ない為に、リスク知らず相手の言いなりに動いて結果損失を出してしまうのは、非常にもったいない事です。
アンダーバリュー取引は、ご自身が被害を被る可能性があることを理解して、安全なビジネスを構築して下さい。
アンダーバリュー取引(輸出インボイス価格変更)が駄目な3つの理由
理由1:当たり前ですが法律違反になります
ときどき、『輸入ビジネスでインボイス価格を低く申告すると脱税の当事者になってしまうが、輸出においては海外のお客の問題であって、万が一何かあっても、自分には追徴課税などは発生しないから問題ない。』という人がいます。
しかし、偽った申告若しくは証明をし、又は偽った書類を提出して輸出入する行為自体がすでに法律違反です【関税法第111条】。
常習的に行っていると、虚偽申告犯として、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金が科せられます。(又は併科)
詳しくは、税関ホームページの『関税法の罰条』をご覧ください:https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm
理由2:輸出免税(消費税還付)が受けれなくなる場合があります
日本から輸出する製品は、消費税の免税が認められております。
しかし、アンダーバリュー取引をすると実際の取引金額と輸出インボイスの金額が異なることになり、免税申請書類の不備を理由に消費税還付額が減されたり、場合によっては受けれなくなる可能性もあります。
理由3:輸送時に紛失や破損すると損失を被る場合があります
精密機器など工業製品の海外発送では、万が一の場合を考えて保険をかけて発送します。
実価格より低い価格で出荷した場合、保険求償しても十分な保険金額は受け取れません。
また、製品が届かない事を理由に、海外のお客から代金の支払いを拒否されたり、注文のキャンセルまたは製品の再製作などを求められ、多額の損失を被る可能性があります。
私は保険をかけずに出荷した機械が輸送途中で盗難された苦い経験を持ってます。ちょっとした油断が、大きな損失になる事を身をもって学ばさせて頂きました。
保険金額は高くてもインボイス価格の1~1.5%程度です。是非、正規の値段で出荷し正しい金額で保険をかけましょう!
最後にアドバイス
アンダーバリュー取引は、様々なリスクを抱えています。
どのような問題があるのかよく理解しておけば、相手に対してリスクを伝えることができます。キチンと説明すれば相手も分かってくれる筈です。
それでも、無理強いしてくる相手は、ご自身にとって本当のビジネスパートナーではないのかもしれません。