海外とビジネスをしていると、消費税の課税対象となるか否かで悩むことがあります。中小企業にとって消費税8%(まもなく10%になる予定)の負担は大きなものです。もし、仕入れた商品やサービスが消費税の課税対象であれば、顧客に対して消費税を含めた価格で販売する必要があります。

1.消費税の大原則

貿易実務者は、どのような取引が消費税の課税対象となるかよく理解しておく必要があります。消費税法第4条(課税の対象)1項、2項によると消費税の課税対象は①日本国内で行われる取引②保税地域から引き取られる外国貨物の輸入取引の2つの場合に限られると記載してあります。ここで注意して欲しいのは国外で行われる取引は国内消費税の課税対象となっていないということです。

ではどういう場合に国外で行われる取引と見なされるのでしょうか?

2.国外取引となるもの

国税庁の資料によると下記2つの場合が国外取引に該当し、消費税の課税対象外(不課税取引と呼びます)となります。

➀役務の提供が行われた場所が国外である場合

消費税法基本通達 第5章5節 役務の提供の意義によると、 役務の提供とは、請負契約、運送契約、委任契約、寄託契約などに基づいて労務、便益その他のサービス(例:請負、宿泊、飲食、出演、広告、運送、委任)を提供することをいいます。また、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれます。

➁資産の譲渡又は貸し付けが行われる時において、その資産の所在する場所が国外にある場合

資産の譲渡とは売買や交換等の契約により、資産の同一性を保持しつつ、他人に移転することをいいます。

3.海外で行った測定試験は消費税課税対象となるのか?

あなたの会社が国内のお客様からある機械部品の測定試験のお仕事を受けたとします。あなたの会社はこの仕事を海外の測定メーカーに委託し海外測定メーカーから入手した測定報告書を国内のお客様に納品をしました。

この場合、国内のお客様からいただいた売り上げ金額および海外測定メーカーに支払った測定試験費用それぞれに対して消費税はかかるのでしょうか?

税務署に会計処理について質問したところ回答は以下の通りでした。

➀売上(国内のお客から入金した額)に関する消費税はかかりますか?

税務署の回答:国外取引となり不課税売上として計上します。よって国内のお客様から入金した金額がそのまま売上額となり預かり消費税は0円となります。

国外取引であることの証明書類が出来ない場合は、国内取引となり消費税課税対象となることがあるので、取引を証明するメール、伝票、契約書などは必ず残しておく必要があります。

➁仕入(台湾に支払った額)に対する消費税はかかりますか?

税務署の回答:海外で行われた役務の提供として国外取引となります。会計上は不課税仕入れとして計上します。よって海外測定メーカーに支払った金額がそのまま仕入額となり、輸入消費税を別途納付する必要はありません。

不課税と非課税の違い
不課税とはそもそも課税がかからないということを意味します。消費税の課税の対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と輸入取引です。これに当たらない取引には消費税はかかりません。これを一般的に不課税取引といいます。
例えば、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などがこれに当たります。
一方、非課税とは、原則としては課税がかかるが例外的に課税がかからないことを意味します。国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等であっても、課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課税しない取引があります。これを非課税取引といいます。
非課税取引と不課税取引では、課税売上割合の計算においてその取扱いが異なります。
課税売上割合は、分母を総売上高(課税取引、非課税取引及び免税取引の合計額)とし、分子を課税売上高(課税取引及び免税取引の合計額)としたときの割合です。
非課税取引は、原則として分母にだけ算入しますが、これに対して、不課税取引は、そもそも消費税の適用の対象にならない取引ですから、分母にも分子にも算入しません。

③海外測定メーカーから提出された測定報告書は、輸入取引と見なされて消費税がかかるのではないですか?

税務署の回答:今回の取引において海外測定メーカーが提供する測定報告書は、測定試験役務の一環として認識されるため不課税対象となり消費税はかかりません。しかしながら、提供する役務が電気通信役務提供(消費税基本通達5-8-3)に該当すると認定されるとリバースチャージ方法で納税が必要となります。

電気通信役務提供とは、簡単にいうとクラウドデーター、Google Adwordsなどののインターネット広告、電話コンサルティング、インタネット英会話などです。
消費税基本通達 第5章第8節の3
電気通信利用役務の提供とは電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供であって、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいうのであるから、例えば、次に掲げるようなものが該当する。(平27課消1-17により追加) (1)インターネットを介した電子書籍の配信
(2)インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
(3)インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
(4)インターネットのウエブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供
(5) インターネットのウエブサイト上に広告を掲載する役務の提供
(6) 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング
(注) 電気通信利用役務の提供に該当しない他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供には、例えば、次に掲げるようなものが該当する。
1 国外に所在する資産の管理・運用等について依頼を受けた事業者が、その管理等の状況をインターネットや電子メール(以下5-8-3において「インターネット等」という。)を利用して依頼者に報告するもの
2 ソフトウエア開発の依頼を受けた事業者が、国外においてソフトウエアの開発を行い、完成したソフトウエアについてインターネット等を利用して依頼者に送信するもの