再び起きた爆発事故
2019年3月21日、中国江蘇省塩城市响水県の農薬製造工場(江蘇天嘉宜化工有限公司)で爆発事故が発生しました。爆発の原因は、農薬製造で使っていたベンゼンへの引火と見られています。
海外報道機関の情報によると死者行方不明者は、90名を超えていると言われており、2015年8月12日天津港で起きた瑞海国際物流有限公司の倉庫爆発以来の大規模事故になります。
ずさんな管理による人災
数年前から中国政府は化学品工場の環境問題や安全問題を厳しく管理していました。しかし、事故を起こした江蘇天嘉宜化工有限公司はここ3年間で6回も行政指導を受け昨年まで生産停止になっていたにもかからず、今年になって生産再開が許可され今回の爆発事故を起こしたとのことです。
今回の事故は、安全性や環境問題に対する意識が低い工場がまだまだあることを意味しており、工場責任者だけでなく、工場再開の許可を与えた地元政府の監督責任も問われることになりまます。
事故の影響、地元政府と中央政府
响水化工園区
爆発事故のあった响水化工園区は閉鎖されており、同地区にある化学品工場はすべて生産が停止となっています。在庫品を日本など国外へ輸出することも許可が下りない状況です。
江蘇省政府の対応
4月1日、江蘇省政府は江蘇省化学品工場整備に関する法案を提出し、今後長江の支流両岸1キロ以内の小規模化学品工場を大幅に削減することを表明しました。具体的には、江蘇省の化学工業メーカーを2020年末までに2000社、2022年には1000社以下とする計画です。江蘇省にある50の化学工業園区を再評価し、最終的に工業園区を20個程度に削減する予定です。
中央政府の対応
今回の事故を受け、化学品工場に対する安全大検査が行われることになります。対象地域は、山東省11个地区(青岛、淄博、东营、烟台、潍坊、泰安、临沂、德州、聊城、滨州、菏泽)、湖南省、青海省、内蒙古、重庆市、北京市、深圳市、邯郸市、唐山市、郑州市、常德市、甘肃省兰州、徐州市、苏州市、鄂州市、铁力市、贵阳市、江门市、仙桃市、泰州市、宿迁市、扬州市、岳阳市、宜兴市、广汉市、靖江市、黑河市、大连市、清远市、鹤壁市、临海市、咸阳市、镇江市、佳木斯市、江都区、福山区、高港区、河桥镇、白沙县、景德镇、盱眙县、湖州市安吉县、永乐江镇などの 53地域です。工場の監査中は、工場の生産停止または生産数減少となる可能性が大です。
中国製化学品の価格への影響
数年前、中国政府は、地条鋼と呼ばれるB級鉄鋼を作っていた小規模鉄鋼メーカーを徹底的に取り締まりました。これにより大手高炉メーカーに注文が殺到、製鉄で使用する黒鉛電極価格が一挙に10倍に跳ね上がる異常事態が発生しました。
ここ最近、習近平政権は、化学品メーカーに対しても厳しい対応を行っています。工場監査によりモラルのない企業が淘汰されるだけでなく、生き残った企業も環境保全や安全設備の追加投資が必要となります。
中国の化学品メーカーの製造原価は上昇しており、今後徐々に販売価格に転嫁されていくと思われます。中国から化学品を輸入している企業は、調達先の突然の生産停止や価格上昇に注意しておく必要があります。