2019年5月15日、米商務省は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と関連企業68社を禁輸措置対象のリスト(Entity List/エンティティリスト)に追加しました。
これによりアメリカ企業は、米政府の許可なしにファーウェイとそのグループ企業に直接製品や技術を提供することができなくなるだけでなく、日本など海外諸国を経由した間接取引も原則禁止されます。
では、具体的にどのような企業がファーウェイと取引きしているのでしょうか?
2018年11月7日、ファーウェイは中国深圳で「2018ファーウェイ コアサプライヤー大会」を開催しており、その時に重要サプライヤーを表彰しています。
このとき受賞した92の企業は、たくさんあるサプライヤーの中で、ファーウェイにとって特に重要なサプライヤーになります。
アメリカ合衆国産業安全保障局(BIS)が管理しているブラックリストのことで、WMD(大量破壊兵器)拡散懸念先や米国の安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された団体や個人が掲載されます。対象となった企業等に対して、米国の製品提供や技術供与を行う場合には、米政府の許可が必要となるため事実上の輸出規制となります。なお、対象企業と直接取引せずに日本など第三国を経由して米国の製品や技術を輸出する場合も同様に許可が必要となります。
2018ファーウェイ コアサプライヤー大会受賞企業
2018年のファーウェイ・サプライヤー大会では、合計92社が受賞しました。受賞が最も多かった国は米国で33社、2番目が中国企業の22社、そして3番目が我が国、日本の11社です。
米国サプライヤーの特徴
下図の受賞企業リストをよく見て見ると、米国企業は、インテル、ザイリンクス、クアルコム、オラクル、オンセミコンダクタ―、ウエスタン・デジタル、テキサス・インスツルメンツなど業界の最先端を行く超一流企業がたくさん出ています。
中国企業も22社受賞していますが、製品の中身を見ると基板やケーブル、コネクター、モジュールなど部品メーカーが中心であり、製品そのものの性能に直接影響をあたえるコア部品は、ほとんどが米国企業です。
米国企業からの調達が難しくなったファーウェイは、これから国産品の比率を増やす必要がありますが、 米国製と同性能の代替品をどのくらいのスピードで国産化できるかは未知数です。
日本サプライヤーの特徴
日本の受賞企業を見るとIT系は少なく、富士通、村田製作所、住友電工、古河電工、パナソニック、NTTエレクトロニクス、三菱電機など電気機器関連の企業が受賞しています。
供給している製品内容を見ると、米国と異なり製品の性能に直接影響を与える製品は少なく、光ファイバー、ケーブル、コネクターなどのハード部品が中心です。
米国や中国と異なり新興企業が少ないのも日本サプライヤーの特徴です
総論
米国トランプ大統領によって火ぶたが切られた米中貿易戦争は、収束するどころか増々激化しています。
かつて中国は、日清戦争で負けたことにより下関条約(しものせきじょうやく)と呼ばれる中国にとって受け入れがたい要求を受け入れた苦い歴史があります。
しかし、今の中国は、昔と異なり世界と戦える国力を持っており、国家の威信をかけて戦う姿勢を崩していません。
米中の貿易戦争が今後どのように進んでいくのか分かりませんが、日本企業として中国の動きをよく注視しておく必要があります。