中国の蒸留酒といえば「白酒(ばいじゅう)」が有名です。本ブログでは、「白酒」について掘り下げてみたいと思います。

白酒とは何か?

白酒(bái jiǔ/バイチュウ)は、中国を代表する蒸留酒であり、長い歴史を持つアルコール飲料です。主にコーリャン(高粱)やトウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどの穀物を原料とし、蒸留することで作られます。アルコール度数は30度以上です。白酒を飲みなれた中国人は、アルコール度数50度以上の方が香りが良く美味しいといいますが、「清河大曲(Qīng hé dà qū)」など75度を超える銘柄もあります。

白酒の生産は、主に長江上流域に位置する貴州省や四川省で行われています。これらの地域には、世界的に有名な白酒メーカーが集まり、「茅台(マオタイ)」や「五糧液(ウーリャンイエ)」といったブランドは、日本でも有名です。

マメ知識

蒸留酒とは、穀物などの原料を発酵させて作った醸造酒を加熱して蒸発させ、その蒸気を冷やすことで、アルコール分を中心とする成分を液体として集めて作ったお酒のことです。

白酒の飲み方

白酒は、中華料理と合わせるととても美味しいです。通常ストレートで飲まれることが多く、その強いアルコールと独特の風味を楽しむのが通例です。もちろん、オンザロックや水割り、さらにはカクテルとしても楽しむことができます。ただ非常にアルコール度数が高いので、飲みすぎには注意が必要です。チェイサー(口直し用の水)を用意して、ゆっくりと味わうことが推奨されます。

マメ知識

白酒は、白いお酒と書きますが、白色ではなく透明です。中国人によると「白」という字には、何色にも染まっていない無色透明の意味があるそうです。余談ですが、白酒に氷を入れると白濁します。

白酒の種類と分類

白酒は、原料や発酵方法、香りによってさまざまな種類に分類されます。

原料による分類

  1. 高粱酒(コーリャン酒):高粱を主原料とした白酒で、一般的に最も多く生産されています。
  2. 米酒:米を主原料とする白酒で、特に南方の地域で多く見られます。
  3. トウモロコシ酒、ジャガイモ酒:他の穀物や根菜類を使ったものも存在します。
マメ知識

高粱(コーリャン)は、日本ではタカキビ(高黍)、沖縄ではトーナチンと呼ばれる。イネ科の植物で、乾燥に強く米や小麦などが育ちにくい地域でも成長します。

麹による分類

  1. 大曲酒:大麦や小麦を使用した麹で作られ、品質が高く、高級白酒の製造に用いられます。
  2. 小曲酒:米を使った麹を使用し、南方で多く作られています。
  3. 麩曲酒:麦を使った麹で、コストが低いため大量生産に向いています。

香りによる分類

中国の白酒は種類が多く、作られる場所の風習と伝統により、原材料と醸造プロセスが異なるため、風味や香もさまざまです。代表的な香りは以下の12種類です。

  1. 濃香型:代表的な銘柄は「五糧液」「剑南春」「泸州老窖」。主原料は高粱(コウリャン)が使われることが多く、深い香りとまろやかな後味が特徴です。
  2. 清香型:代表的な銘柄は、山西省の「汾酒」。主原料は高粱(コウリャン)が使われることが多く、さわやかな香りと軽やかな後味が特長です。
  3. 米香型:代表的な銘柄は、「三花酒」「湘山酒」が代表。主原料は米が使われる場合がおおく、柔らかい甘みとさっぱりとした後味が楽しめます。
  4. 酱香型:代表的な銘柄は、「茅台酒」。主原料は高粱(コウリャン)が使われることが多く、豆類の発酵による醤油のような香りが特徴で、余韻が長く残る深い味わいです。
  5. 鳳香型:代表銘柄は、中国八大銘酒の一つ陕西宝鸡凤翔县柳林镇の「西凤酒(西鳳酒)」です。主原料は高粱(コウリャン)が使われることが多く、まろやかで香りが良く調和のとれた後味が特徴です。
  6. 豉香型:代表銘柄は、广东石湾の「玉冰烧」。米を主原料として醸造しており、独特な薫りと、きめ細かなで、ほんのり甘い後味が特徴です。「豉」とは、豆を原料とした食物のこと。味噌・納豆(なっとう)の類とも、たまりの類ともいわれます。
  7. 豉香型:代表銘柄は、广东石湾の「玉冰烧」。広東省の白酒。米を主原料として醸造しており、独特な薫りと、きめ細かなで、ほんのり甘い後味が特徴です。尚、「豉」とは、豆を原料とした食物です。
  8. 芝麻香型:代表銘柄は、山东潍坊の「景芝白干」。主原料は、高粱(コーリャン)、小麦等。芝麻とは、胡麻(ゴマ)のことですが、醸造原料にゴマが含まれているのではなく、炒めた胡麻のような香りがあります。芝麻香型の白酒は、山東省、江蘇省、内モンゴルなどで生産されています。
  9. 老白干香型:代表銘柄は河北省の「衡水老白干」。主原料は高粱(コウリャン)。老白干の「老」とは古いという意味があり、このタイプの白酒の歴史は古く、漢代から始まり、明代で有名となりました。1900年余りたってもその歴史が途絶えることがありません。
  10. 兼香型:代表銘柄は、安徽淮北の「口子窖」、湖北荆州の「白云边」。主原料は、高粱(コウリャン)。2種類以上の香りが楽しめる白酒です。濃醤をベースとしながら複雑な香りをもち、ふくよかできめ細やか舌ざわりが格別です。なお、「白云边」の名前は、李白の詩<游洞庭>から来ています。
  11. 馥郁香型:代表銘柄は、湖南吉首の「酒鬼酒」です。河南省の湘西地区は、多くの少数民族が住んでおり独自の醸造方法があり「酒郷」と言われており、湖西を流れる長江の支流は「酉水河」は、「酒河」と呼ばれています。「酒鬼酒」の鬼は、湖西では、自己を超越し、天地と融合した精神状態を表しており、伝統的な小曲酒醸造技術と大曲酒醸造方法を結合させ、醤、濃、清等の異なる香りの特徴を巧みに融合させて、新しい香りと口当たり実現した白酒です。
  12. 薬香型:代表銘柄は、贵州遵义董公寺镇の「董酒」です。「董酒」は、生産地にある董公寺から名前を得ています。冬は寒すぎず、夏は暑すぎない気候条件のもと贵州大娄山脉の地下水で醸造したお酒に130種以上の草木エキスを溶け込ませており「百草の酒」優雅で落ち着く薬草の香りがします。

白酒のトップ銘柄

ここでは、一度は飲んでみたい中国の白酒トップブランドをいくつか紹介します。

  1. 茅台:貴州省産の世界的に有名な白酒。独特の「酱香型」で、国際的な晩餐会などでも振る舞われることが多いです。
  2. 五糧液:四川省産の濃香型白酒。五種類の穀物を使った深い味わいが特長です。
  3. 剣南春:四川省で生産される高品質な濃香型白酒。歴史が長く、バランスの取れた香りと味わいで知られています。
  4. 洋河大麴:江蘇省産の白酒で、特に口当たりの良さが人気。
  5. 瀘州老窖:瀘州市産の濃香型白酒で、伝統的な製造方法を守り続けています。

白酒の楽しみ方

白酒は、その地域ごとの特色が強く、風味や香りが異なるため、比べて楽しむのも良いでしょう。また、古いほど味わいがまろやかになるという特徴もあり、貯蔵しておくことで独自の風味が楽しめるようになります。ただし、長期間の保存には適切な条件が必要です。

まとめ

白酒は中国の文化や歴史に深く根ざしたお酒であり、世界三大蒸留酒の一つとされています。その強いアルコール度数と独特の風味から、初めて飲む人には少々ハードルが高いかもしれませんが、さまざまな種類とスタイルを楽しむことで、きっと自分好みの一本が見つかることでしょう。中国を訪れた際には、ぜひ本場の白酒を味わってみてください。