CIFで契約したら売主である輸出者が保険をかけます。

輸出ビジネスを行う人にとって心配なのは、海上輸送中の貨物(製品)破損や紛失です。

船の沈没や座礁などの航海中の事故だけでなく、船積み前の国内港倉庫が台風などで浸水したり、荷役中の貨物落下や盗難など⼈為的な事故もあります。

不測の事態で損害を被らないように海上保険があります。

FOB(本船甲板渡し条件)で契約を締結した場合、貨物が輸送船舶の上に置かれた以降の海上輸送保険は、買主である輸入者がかける必要があります。

一方、CIF(運賃・保険料込み条件)で契約を締結した場合、仕向け地港までの海上輸送保険は、売主である輸出者がかける必要があります。

輸出地の港で船積み前に貨物が破損したらどうなるのか?

例えば、あなたが売主(輸出者)であるとし、CIFで契約を締結し、保険会社に依頼して海上保険を付保したとします。

貨物を、輸出港の指定倉庫に搬入し、船積みを待っていたところ、大型台風が直撃、高潮により港倉庫が浸水し貨物が使えなりました。

この場合、海上保険は、損失をカバーしてくれるのでしょうか?海上保険という名前の通り、海上の損害以外は、求償できないのでしょうか?

日本の保険会社は、ICCと呼ばれるロンドン保険業者協会が定めた保険条件(協会貨物約款)を採用しております。

2009年に改訂されたICCの新約款では、保険開始に関して以下の通り定めております。

保険開始に関する2009年ICCの新約款
8.1 Subject to Clause 11 below, this insurance attaches from the time the subject-matter insured is first moved in the warehouse or at the place of storage (at the place named in the contract of insurance) for the purpose of the immediate loading into or onto the carrying vehicle or other conveyance for the commencement of transit, continues during the ordinary course of transit and terminates either、、、
下記第11条に従うこととして、この保険は(この保険契約で指定された地の)倉庫または保管場所において、この保険の対象となる輸送の開始のために輸送車両またはその他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で、保険の目的物が最初に動かされた時に開始し、通常の輸送過程にある間継続し、、、、、

つまり、外航貨物保険でカバーされる期間は、通常Warehouse to Warehouse条件(倉庫間約款織込み:Incorporating Warehouse to Warehouse Clause)ということです。

では倉庫または保管場所において、まだ動かしてない貨物はどうなるのか?これについては、判断が難しいところであり、ご利用される保険会社に事前に相談して確認しておくことをお勧めします。

外航貨物海上保険は3種類あります。

海上保険は、貨物の性状や梱包及び輸送環境などに応じて最適な保険が選択出来るように、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の3種類があります。

填補範囲は、ICC(A)が一番広く、ICC(B)>ICC(C)の順で狭くなります。また、保険料率もICC(A)>ICC(B)>ICC(C)の順で安くなります。

ほとんどの場合は、ICC(A)を使いますが、特殊な貨物や保険会社の引受条件などにより、ICC(B)、ICC(C)が選択される場合もあります。

因みに、ICC(A)は、海上輸送中の事故だけでなく陸上での荷役中の事故や盗難など全ての危険を⼀括でカバーできますが、戦争、ストライキ、被保険者の違法行為、梱包不十分、運送の遅延、原子力兵器等による損傷等は免責となります。

ICCとは?
ICCは、貨物保険においてロンドン保険業者協会が定めた保険条件(協会貨物約款)のことで、Institute Cargo Clausesの略で、国際保険市場において標準保険約款として認められています。

ICCは、何回か改訂が行われておりますが、現在、1963年に作成されたICC(1963)、1982年に作成されたICC(1982)および2009年に作成されたICC(2009)の3種類が使用されています。どの約款を使用するかは、保険を引き受ける保険会社の規定によって異なりますが、一般的に最新のICC(2009)を使います。