皆さんは中国ワインを飲んだことがありますか?

「中国は、紹興酒と白酒そしてビールでしょ!」と思った人は間違いです!

これから皆さんを中国ワインの世界にご招待します。

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中国ワインを飲んだことが無い人は、これを機会に一度、飲んでみてはいかでしょうか?
 
 

中国はワイン消費大国です。

まず皆さんに質問です。

アジアで一番ワインを消費しているのはどの国でしょう?

答えはなんと「中国」です。

中国では毎年16億~18億リットルのワインが消費されています。この量はワインを習慣的に飲んでいる米国・フランス・イタリア・ドイツについで世界5位です。

現在、中国の人口は約14億人なので平均すると中国人一人当たり1年で1.1~1.3リットル(ボトル換算で1.5本から1.7本)のワインを飲んでいる計算になります。

下のデーターはドイツの市場調査機関Statista社が発表している中国ワイン消費量推移です。2020年はコロナの影響でワイン消費が落ち込みますが、再び右肩上がりで伸びる予想です。

中国のワイン消費量(単位百万リットル)

※市場調査機関(独)Statista社の2020年10月の情報より

ちなみに日本のワイン消費量は年間3.5~3.7億リットルで中国の約5分の1の量しかありません。

補足

日本は一人当たりの年間消費量で計算すると2.8~3.0リットル(3.7~4本)あり中国よりは多いです。

 
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中国はワイン生産大国です。

もう一つあまり知られていない事実があります。

それは、中国がワイン生産大国であるということです。

実は中国国内で消費するワインの約半分は国産(中国産)です。

2018年に中国国内で生産されたワインは9.3億リットルになります。

ちなみに世界的に有名なワイン生産国のポルトガルの年間生産量が約6.1億リットル、ニュージーランドにいたっては約3.0億リットルです。

中国の生産量が如何に多いか分かると思います。

補足

2018年の世界のワイン生産量は292.3億リットルです。その内の7割はイタリア・フランス・スペインなどのヨーロッパとアメリカで生産されています。

 
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中国ワインの意外な歴史とは?

中国では少なくとも5000年前から野生の果物を長期間保管しカビを生やして発酵させ作った液体を味わう文化がありました。

これはいわば原始的な発酵酒ですが今のワインとは少し異なります。

葡萄を使った本格的な赤いワインが中国に入って来たのは今から2000年以上前の漢時代からです。

皆さんは「シルクロード(絹の道)」と呼ばれている西洋と中国を結んでいた交易路を聞いたことがあると思います。

このシルクロードを切り開いた冒険家である張騫/ Zhāng Qiān(?-前114年)が、西域の国に行ったときにワイン用葡萄と一緒にワイン作りの職人を連れて帰りました。

これが中国ワインの始まりと言われています。

中国においてワインは長らく皇帝や貴族などのいわゆる特権階級だけしか飲むことができない貴重なお酒でした。

本格的にワインが普及したのは唐の時代(618年-907年)に入ってからです。

唐の時期は中国歴代王朝の中でもっとも華やかだった時期です。

文化の繁栄によりワインは貴族・大臣の特権階級の飲み物ではなくなり、一般人も楽しむようになりました。唐王朝の全盛期には男性だけでなく女性もワインを飲んでいました。

中国人にとってのワインは最近飲み始めた目新しいお酒ではないのです。

補足

日本史にワインが登場するのは室町時代(1336年~1573年)の終わりからです。スペインやポルトガルの宣教師が持ち込んだのが始まりと言われています。当時はワインのことを「珍蛇(チンタ)」、「南蛮酒」などと呼んでいました。

 
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中国ワインの生産地とは?

ワイン生産に適したワインベルト

ワインの原料となる葡萄には栽培に適した気候条件があります。

具体的には年間の平均気温が10~20度で、発芽から成熟に必要な日照時間が1000~1500時間年間降雨量が500~900ミリという条件を満たしている場所が良いと言われています。

この条件にあてはまる地域は、北半球の北緯30~50度、南半球の南緯20~40度の範囲と言われており、この緯度帯をワインベルトと呼んでいます。

ワインベルトと世界地図

中国のワイン生産地

中国は国土のど真ん中をワインベルトが通っており、ワイン生産に適した土地が多くあります。

現在、中国には900余りのワイナリーがあり各地でワインが作られています。

近代ワインの生産地として有名なのは中国の山東省です。中国産のワイン用ブドウの約3分の1が山東省産です。

とくに山東省の海に面した煙台市は夏は比較的涼しく冬は温暖なためワイン生産に適しています。

煙台市には、ワイナリーを含めワイン関連企業が150社所在し、2018年の生産量は全国の40%もあり「中国のボルドー」とも呼ばれています。

補足

フランスのボルドー地方の緯度は、北海道最北端の宗谷岬とほぼ同じです。しかしボルドーは大西洋と地中海をめぐる暖流の影響で北海道よりもだいぶ温暖な気候でブドウ栽培に適した環境です。

【フランス/ボルドー地方】

  • 年間平均気温:13.3℃
  • 北緯:44~45度
  • 年間平均降水量: 844ミリメートル
  • 年間平均日射時間:2,083.6時間

【中国/山東省煙台】

  • 年間平均気温:13.4℃
  • 北緯:36度~37度
  • 年間平均降水量: 524.9ミリ
  • 年間平均日射時間:2488.9時間
補足

煙台市は山東半島東部に位置する港湾都市です。煙台という名前は、明代の1398年(洪武31年)に、倭寇対策のために奇山北麓に城が築かれ、その北の山に倭寇襲撃時に警報の狼煙を上げる塔が建設されたことに由来します。

 
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中国の高級ワインとは?

中国の主要ワイナリー

Changyu Castel Cabernet Gernisht(シャトー・チャンユー・カステル 珍蔵級)

中国ワインの10大ブランドは「长城」「张裕」「王朝Dynast」「通化」「威龙」「新天」「丰收」「云南红」「香格里拉」「华夏五千年」です。

中でも有名なのが「張裕ワイン」で名実共に中国ワインのトップブランドです。

張裕ワインは、清朝末期の1892年に資産家である張弼士(zhāng bì shì)が、欧米でも通用するワインを目指し、私財を投げうって作ったワインナリーのブランド名です。

2001年にはヨーロッパ最大のワイングループでもあるカステルグループと正式に提携し、煙台に中国初のシャトー(葡萄生産から醸造、瓶詰めまでおこなう生産者)となる「シャトー・チャンユー・カステル」を建設しました。

2017年には、世界酒類貿易専門誌のDrinks Businessが発表した2017年の「世界ワインブランドトップ10」で4位となりました。

Changyu Castel Cabernet Gernisht(シャトー・チャンユー・カステル 珍蔵級)は、張裕ワインの最高ランクです。

蛇龍珠(shé long zhū)と呼ばれる中国のブドウ品種を使用し、フレンチオークで9ヶ月以上熟成させ、収穫から出荷まで2年半以上の時間をかけて製造します。

濃厚な果実味と程よいタンニンがあり、樽のアロマも感じられるエレガントな飲み口が特徴です。

ちなにみ、蛇龍珠の英語名は”Cabernet Gernischt”です。

”Gernischt”はドイツ語の「混ざる」「交じる」を意味する”Gemischt”が誤って綴られたものと言われており、直訳すると「カベルネ・ソーヴィニヨンの交配種」という意味になります。

補足

蛇龍珠は、カベルネソーヴィニョンとカベルネフランの自然交配種との説もあり、謎に満ちた葡萄です。

Ao Yun (アオユン

Ao Yun(アオユン)はワインに詳しい人なら一度は聞いたことがあるかもしれません。

ルイヴィトングループのアルコール部門であるモエヘネシー社と雲南香格里拉酒业股份有限公司が合同で作ったスーパープレミアムワインです。

ワイナリーは中国雲南省の北西部のヒマラヤ山脈の麓「梅里雪山」にあり、標高はなんと2200〜2600メートルもあります。

Ao Yunは、中国語で“敖云”と書きます。意味としては「雲上の飛翔」または「雲上の散策」を意味しており、ワイナリー周辺の山々の頂きにかかる雲から名づけられました。

葡萄は、カベルネ・ソーヴィニヨン/カベルネ・フランを使用し、フレッシュでエレガント、優れたバランス、絶妙なタンニンが象徴的な赤ワインです。

Ao Yunの販売が始まったのは2013年からで新しいワインですが、どんな味がするのか是非飲んでみたい1本です。

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